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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

タマスダレ/ 名前の由来を考える/どこが「玉(タマ)」と「簾(スダレ)」なのか

タマスダレ(玉簾)/ヒガンバナ科/タマスダレ属
南米原産の帰化種 多年草 花期は6〜10月

「すだれ」は日除けや室内の目隠しなどで使用される道具で、細長い棒材を平行にいくつも並べ、えー、説明が面倒だな。以下略。

名前の由来を読むと、「タマスダレ」の「スダレ」は「細長い葉が簾(すだれ)のように見えるから」とある。これは納得できる。分からないのは「玉(タマ)」である。花を「玉」に見立てたという解説が多いが、なんのこっちゃである。

中国で「玉(ぎょく)」というと、おもに緑色の「翡翠(ひすい)」と白い「石英」を指すようだ。この両者は中国ではアクセサリーとして今でも人気があるという。身につけるとかなり重いらしいが、そこは好みの問題である。オシャレの前には重さなど関係がないのである。


「タマスダレ」と聞くと私などは演芸の「南京玉すだれ」を思い浮かべるが、この花との関係性がはっきりしない。「南京玉すだれ」は江戸時代からあり、「南京」とついているが日本オリジナルの芸だ。「南京玉すだれ」の語源の解説が見つからなかったが、おそらく「玉」は「たま」ではなく「ぎょく=宝石、貴石」の意味があるのではないか。当時の文化の中心地の中国の南京にも見当たらない「宝石のような貴重なすだれ」の芸ということだろう。実際に「南京玉すだれ」に使う「すだれ」は巻き寿司などを作る「まきず」とは構造が違う。「まきず」で、あの芸はできない。

花の「タマスダレ」は明治初めの1870年に渡来しているから「南京玉すだれ」より明らかに後である。葉を「すだれ」に見立てるはいいが、なぜ「花」がいきなり「玉」になったのか。


「すだれ」に「玉」を組み合わせるといっても装飾か重しに使うぐらいしか思い浮かばない。昔の宮中で使われた「御簾(みす)」には大きな房のついた飾りが2つ付いているが、そこに「玉」を吊るしていたわけではないようである。全く無かったと断言はできないが、画像を検索しても見当たらなかった。

「玉」を重しに使うといえば掛軸の下に左右に2つ吊るす「風鎮」(巻きグセのついた掛け軸が真っ直ぐになるように使う重し。重しなので必ず「玉」が使われる。装飾も兼ねている。)があるが、これは「すだれ」に使うものではない。昭和の時代のご家庭には、木を加工して玉の形にし、それに紐を通していくつも吊り下げた「玉暖簾(たまのれん)」がつきものであったが、これも「すだれ」ではない。歴史的に見ても「すだれ」と「玉」がペアであるということは確認できなかった。

花の「タマスダレ」とは、葉が「簾(すだれ)」を連想させ、その上、花もついているという珍しい植物(珍品=玉=貴石)であることを強調した名前なのではないだろうか。言ってみれば「南京玉すだれ」が「玉=貴重な」と主張したのと同じ流れである。そうだとしたら明らかに過大広告だ。それほどのものでもないだろう。大げさ過ぎる。

上の写真は「タマサンゴ(玉珊瑚)/ナス科/ナス属」ブラジル原産の常緑低木
珊瑚で作った「玉(ぎょく)」のような実がつくので、縁起がよいとされる。分かりやすい素直な名前である。 

写真:zassouneko
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