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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

オランダミミナグサと枕草子

オランダミミナグサ(和蘭耳菜草)/ナデシコ科/ミミナグサ属
ヨーロッパ原産の1年草。葉は対生。花期は3〜5月

明治末に入ってきたと思われる帰化植物で1910年代に横浜で最初の帰化が確認されました。ミミナグサは「耳菜草」で葉の形をネズミの耳に例えており、「菜」は食用として利用していたからです。「オランダミミナグサ」は全体に細かい毛が生えており、食べても美味しくはないそうです。「ミミナグサ」は英語で「mouse eared chickweed」と書く場合もあり、直訳すると「ネズミの耳(の形の葉)をもつハコベ」です。どういう訳か西欧でもネズミの耳と表現しています。昔からそう呼んでいたのか近年にどちらかが影響を受けたのかは不明ですが。

清少納言の「枕草子」の中に「若菜摘み」の話があり、「耳菜草」が出てきます(第131段)。「若草摘み」は今で言う「春の七草」のような宮中の行事です。この花は春の七草の「ハコベ」にそっくりなのですが、昔の人はミミナグサとハコベをちゃんと区別していたようです。ところで名前にある「オランダ」とは何のことでしょうか。ヨーロッパの中でオランダが選ばれたのは何故でしょうか。

江戸幕府は長く鎖国政策を続けており、外国との窓口は長崎の出島に限られていました。しかも長期に渡って滞在を許されたのはオランダだけでした。これだけでは名前に「オランダ」が選ばれた理由はなりません。何故なら「オランダミミナグサ」は明治末の渡来ですし、その頃には他の国との貿易も盛んになっていたからです。それらの理由からすると「外国からの舶来品」という大雑把な意味で「オランダ」という名称を選んだのではないでしょうか。ヨーロッパといえば長年にわたり交易のあったオランダのイメージが強かったのでしょうね。「唐」や「南蛮」が名前についているものも多いですしね(唐辛子、唐茄子、南蛮煙管、南蛮漬けなど)。

日本に帰化している「ミミナグサ」の仲間だけでも他に5種ほどあります。有名でない雑草の名前を探すのは結構たいへんです。また「ミミナグサ」ばかりでなく、1,200種を越える外来種が「帰化植物一覧表」 に掲載されています。植物だけでもそんなにあるのか、と驚くばかりです。
ナデシコ科は「ミミナグサ属」「ハコベ属」「ノミノツズリ属」「ツメクサ属」など似たようなものが多く見分けるのが大変です。別項に簡単な見分け方を載せています。
上記の写真は2016年1月下旬の「オランダミミナグサ」です。数日前に雪が降ったというのに元気です。(2016.1.21)

イラスト&写真:zassouneko 



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