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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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ジュウニヒトエ〜偽りの紫/2019.5.14

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ジュウニヒトエ(十二単)/シソ科/キランソウ属
在来種 花期は春 学名はAjuga nipponensis

さて、いきなりだが冒頭の写真は「ジュウニヒトエ」ではない。これは「セイヨウジュウニヒトエ」「セイヨウキランソウ」「ヨウシュ(洋種)ジュウニヒトエ」「アジュガ」などと呼ばれる別の植物なのだ。日本の在来種の「ジュウニヒトエ」の学名は「Ajuga nipponensis」で、「日本(ニッポン)」が入っているが、「セイヨウジュウニヒトエ」の学名は「Ajuga reptans(匍匐性の、這って根を出したの意味)」である。ついでにAjugaの意味だが、Aは「無い」、jugaは「軛(くびき)、束縛」である。つまり「束縛がない」ということで「花冠の下唇上に軛を共にするもの(即ち配偶者の一方)が見えないため」となる。なるほど。さっぱり分からん。何を言っているのだろうか。

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春になるとよく見かけるし、てっきり日本の「ジュウニヒトエ」だと思っていたが、違うのである。日本のものは花の色が薄い。白と言ってもいいほどだ。何か今まで騙されていたような気がするぞ。騙されついでに着物の方の「十二単」だが、12枚の着物を重ね着するわけではないそうだ。ウィキペディアによると「平家物語」の異本である「源平盛衰記」に「十二単の御衣を召され」とあるのを勘違いしたとある。実際は「五衣唐衣裳」と呼ばれていたらしい。つまり重ね着は五枚程度なのである。

前段に「今まで騙されて」と書いたが、もちろんこちらの勘違いの部分が大きい。何を勘違いしていたのかというと、「十二単」→「平安時代の女性」→「紫式部」のような理解をしていたのだ。当時、紫は高貴な色とされ、限られた者しか使用することはできなかった。これは日本のみならず西洋でもそうである(カエサルのマント等)。こうしたことから「十二単」→「高貴」→「紫色」となり、「ジュウニヒトエ」の花は紫色だと思い込んでしまったのだ。全然違うじゃないか。

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上の写真は「キランソウ(シソ科/キランソウ属)」。紫色である。小川の交差点近くにあった空き地で見つけた。今は駐車場になってしまったので、もう見ることはない。

なんだか悔しいので、最後に「ジュウニヒトエ」の名前に文句をつけておこう。名前の由来は花弁が重なるように咲くので、その様を「十二単」に例えたとある。だが、上にも書いたとおり「五衣唐衣裳」が正しいのだ。重ね着のことを指しているとしても、「十二単(本当は違うが)」は色の異なる着物を何枚か着て、その重なりからのぞく色彩の妙を競い合った(色のセンスが問われる)ものであるから、単一色の花びらが重なっていても、あでやかとはいいがたいのである。

「ヒメオドリコソウ」は花の形を踊り子に見立てた。シソ科の花の形は人の顔や姿を思わせる。この「ジュウニヒトエ」の花も人の形をしている。頭と両手、両足があるように見える。これは重ね着をして着ぶくれた女性の姿である。

写真:zassouneko
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