北米原産。多年草。繁殖期は6〜9月、40〜70cm。
明治時代に牧草にまぎれて侵入し1943年に帰化が報告されたとある。北海道から沖縄まで分布している。「ワルナスビ」とは、これまたストレートすぎる名前である。名前には少しくらいのひねりや情緒がほしい。意外なことに、この草の由来や経歴ははっきりしている。命名者は植物学者の牧野富太郎博士である。氏の著書によると昭和十一年前後、上総(千葉県)の印旛郡三里塚の牧場で初めて採集したとのこと。牧草に紛れ込んでの非意図的侵入です。この場所は現在の成田空港です。「ワルナスビ」を見つけた牧場というのは「御料牧場」のことで、空港の建設計画を受けて、那須の御用邸もある栃木県へ移転したのである。三里塚近辺は農地しかないと思っていたが御料牧場があったのか。
牧野氏が「ワル」とまで断言するのには理由がある。まず毒を持っていることと葉や茎にはするどい棘があることだ。毒の正体はソラニンで同じナス科のジャガイモなどに含まれるものと同じです。有毒なため家畜が食べないので増える一方だそうです。家畜もよく毒だとわかるものだと関心しますが、豚などは芽の出たジャガイモを食べて被害に遭うと聞いたことがあるので、家畜は毒ではなく棘を避けているのでしょう。野菜のナスにも刺はありますが、このワルナスビは茎や葉にもあります。棘の存在を知らずに撮影していて刺されました。痛いです。
多年草なので駆除するには根まで掘り出さねばならず、もし根が切れたりして残ってしまうと再び生えてくるそうです。地下2m、横6mにも地下茎を延ばしたという報告もあります。そして種子でも繁殖します。また病害虫の温床となる場合もあるようです。要注意外来生物リストにも載っていますし、持ち込みや栽培を禁止している県や国もあります。別名「鬼ナスビ」「荒地ナスビ」、英語だと「ソドムのリンゴ」「悪魔のトマト」。もう「ワル」どころではありません。
牧野先生は千葉の牧場から持ち帰ったワルナスビを自宅の庭に植えてみたそうです。ところが次々に増えてしまい、駆除しようとして悪戦苦闘されたそうですが、それも果たせず、しまいには近所の畑にまで生えるようになってしまったとのことです。植物学者なのに。