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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

セイタカアワダチソウ/良いところもあるような/2019.10.5

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セイタカアワダチソウ(背高泡立草)/キク科/アキノキリンソウ属
北アメリカ原産の帰化植物 多年草 花期は8〜10月 高さは1〜2.5m

最近気になっているのが「セイタカアワダチソウ」である。1900年に観賞用として、またミツバチのための蜜源植物として輸入されたようだ。日本国内で爆発的な繁殖が始まったのは戦後の頃からだという。現在ではありふれた雑草の一つに過ぎない。まあ、大きくて黄色いから目立つしなあ。花粉症の原因だという汚名を着せられたりもした。上の写真のようにまだまだ元気で繁殖しているように思うが、往時の勢いは既になく、衰退期に入っているという見方が有力だ。そうなると栄枯盛衰を目の当たりにしているような感傷的な気分にさせられる。そこで、あらためて「セイタカアワダチソウ」のことを振り返ってみたいと思う。まるで「故人を偲んで」みたいな書き出しだな。

まず「背高泡立草」とは「背の高い泡立草」であるから、普通の背丈の泡立草がいるわけである。ところが、そんな植物は存在しておらず「アキノキリンソウ/キク科」の別名が「アワダチソウ」なのである。もうここで肩すかしを食らってしまう。「セイタカアキノキリンソウ」じゃダメなのかと思うが、「背高」「秋の」という形容詞が多くなるのを避けたのかもしれない。誰が命名したのかは知らんが。では、なぜ「アキノキリンソウ」が「アワダチソウ」と呼ばれるのだろうか。ある解説によると、花が下から上へ次々に開花する様子を「泡立つように見えるから」ということらしいが、その話を素直に納得しろと言われても困るなあ。イメージがまるで湧かないのである。

水中から湧き出た泡が水面で消えずにとどまり、その後から次々と湧いてくる泡に押されて上へ上へと上がっていく。その様子が「泡立つ」なんだろうなとは思う。だが、昔の日本において、泡が次々に湧き上がってくるような状態が日常的にあったのだろうか? 石鹸があったとは思えないし。想像がまるでつかない。だが、あるサイトに貴重な情報が載っていた。それは日本酒の醸造である。

日本酒の製造過程で発酵が進めば泡が発生する。おそらく酵母が二酸化炭素を排出してそれが泡になって浮かんでくるのだと思う。この泡は粘度があるのでなかなか消えず、次々に下から送られる泡によって盛り上がってくる。それが発酵度を判断する目安にもなるという。ビールの泡を想像してほしい。あれが消えずに残っていたら、どんどんと盛り上がっていくだろう。醸造過程の写真を見ると、かなり泡立っている。写真なので泡の層の厚みが分からないが、10㎝以上は優にあるのではないか。これで「泡立つ」の意味が納得できた。なお現在では「泡立つ酵母」ではなく「泡立たない酵母」が主流だそうだ。

「泡立ち」は分かったのだが、それが花の様子となかなか結びつかない。花が泡立っている状態に見えないのである。感性の問題だろうか。悩んでいても進まないので次に移ろう。ここからは本名である「アキノキリンソウ」について話を進める。頭に「秋の」と付くから秋じゃない季節に咲く「キリンソウ」がいるわけである。それが「キリンソウ/ベンケイソウ科」である。「キク科」からいきなり「ベンケイソウ科」の植物になってしまったな。また肩すかしか。だんだんとこんがらがっていくような気がするなあ。それはともかく。このように新しく命名する際に別種の花の名前を借りるのはたまにあるが、経緯を知らないと両者を同じ仲間だと勘違いしてしまう。それは植物をいろいろと知る上での障害になっている気がする。さて、気をとりなおして今度は「キリンソウ」について調べよう。

まず「キリンソウ」の「キリン」は「黄輪」であって「麒麟」ではない。日本名を「麒麟草」としているサイトを結構見かけるが、花の色が黄色だからといって動物の「キリン」とは何の関係もないのである。なぜなら本物の「キリン」を見た日本人などいなかったからである。動物の「キリン」が日本に初めてやって来たのが今から100年ちょっと前の明治40年なので、それ以前に「キリン=黄色」などという連想が湧くわけがないのだ。見たことがないのだから。江戸時代の画家たちの作品にも「キリン」は出てこない。虎や象はあるのだが。当時は「キリン」と言えばキリンビールのラベルでお馴染みのあの動物しかなかったのである。しかも、この「麒麟」は伝説上の聖獣で実在していない。ビールのラベルを見るとライオンと龍と馬の要素が入っているような印象を受ける。体には鱗のようなものもある。

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写真フォルダの「マンネングサ」の項目に入っていたのを見つけたが、「キリンソウ」かな?「マンネングサ」の仲間だと思っていたので気にも留めていなかったし撮影場所も忘れてしまった。これが「黄輪」ということなのかな。そう言われればそうかとも思うけど。どうもスッキリしないと感じていたが、それもそのはず、実は「キリンソウ」の名前の由来はいくつもあり、定まっていないのだという。

と、いろいろと書きつらねてきたが、気になることも多々ある。まず、「キリンソウ」と名付けられた時期がいつなのかはっきりしないということだ。ひょっとしたら本当に「麒麟草」かも知れないのだ。すぐ上に「由来が定まっていない」と書いたのも、植物の姿形(葉も含めて)を「麒麟(伝説上の)」に見立てたという説もあるのだ。

他にひっかかっているのは「泡立つ」が「粟立つ」ではないだろうかということだ。「粟立つ」は「鳥肌が立つ」と同じ意味で「肌が粟立つ」とも言う。それに「粟」の実は黄色なのだ。もともと「セイタカアワダチソウ」は観賞用として輸入された。秋の七草でもある「オミナエシ」に似ているというのも消費者に対してのアピールになる。そして花を少し離れた所から眺めると小さな粟粒が寄り集まっているようにも見えるのだ。「濡れ手で泡」は間違いで、正しくは「濡れ手で粟」なんだよな、と関係ないことを呟いてみる。

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2mを優に超えている「セイタカアワダチソウ」。晩秋まで咲き残る花には多くの虫たちが集まる。彼らにとっては冬の訪れを間近にした最後の食事なのかもしれない。そうそう、ごく最近知ったのだが草丈が1〜1.5mほどの「オオアワダチソウ(大泡立草)」というのがいるという。そのぐらいの草丈のものも結構見かけたりするのだが、あれは発育のよくない「セイタカアワダチソウ」じゃなかったのか。区別がつかんぞ。

写真:zassouneko
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