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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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ヒオウギ/さまよえるヒオウギと私

ヒオウギ(檜扇)/アヤメ科/アヤメ属 在来種 多年草

いきなり下手なイラストで申し訳ないが、フリーで使える写真が見つからないのだ。お許しいただきたい。写真を検索して、ぜひ実際の「ヒオウギ」の姿を見ていただきたい。
まず、話の中心となる「檜扇(桧扇)」とは③のような「ヒノキ」の薄板で作られた扇のことである。コーヒーフィルターにも見えるが気のせいである。この「扇」が②の「ヒオウギ」の葉を連想させるところから「ヒオウギ(檜扇)」と名付けられた。①は花であるが、実はこの花の色が問題だと考えている。それは「ヒイロ(緋色)」と呼ばれる日本の伝統色の一つで、シャーロック・ホームズが主人公のコナン・ドイルの小説「緋色の研究」でも、その名を知られている。赤というより赤みがかった濃い橙色といった色だ。ほとんどの人は花を見る場合に、葉の形より花の色や形に目を向けるのは致し方ない現実である。それが「ヒオウギ」という発音と花の「緋色」が相まって、我々を「緋扇(ヒオウギ)」という誤った文字を使う方向へ導いている。

では「ヒオウギ」の変遷を見ていただきたい。と言っても写真が無いので文字だけの説明となる。なお、命名の順番が分からないので、名前の変遷の歴史(新しい名前はすでにある名前を参考としているのだ)は無視しているが、在来種の「ヒオウギ」の命名が一番古いことには疑問の余地はない。注目していただきたいのは「ヒオウギ」の「ヒ」が、「檜」から「緋」へ変化する様子である。

まず「ヒオウギアヤメ(檜扇菖蒲)/アヤメ科/アヤメ属」(在来種)という花だ。花の色は一般的な「アヤメ」と同じく「紫」を基調としている。「緋色」が入り込み余地は無く、「檜扇」という表現で問題はない

「ヒオウギスイセン(檜扇水仙)/アヤメ科/ワトソニア属」(南アフリカ原産の帰化種)。名前の由来は、葉の形は「檜扇」、花の形が「水仙」に似ており、そして花は鮮やかな「緋色」である。「檜扇」などという「アヤメ科」によく見られる葉の形状が、際立った特徴になっているとは思えないし、葉が注目されることは少ない。この花には「檜」を「緋」と誤認させるようなベクトルを感じる。元々の「ヒオウギ(檜扇)」自体にも、そのベクトルは見えているが、名前の由来ははっきりしている。安易に「〜ヒオウギ」という言葉を使う方が問題である。

「ヒメヒオウギスイセン(姫檜扇水仙)/アヤメ科/ヒオウギズイセン属」(明治中期に渡来した帰化種)。「ヒオウギスイセン」と「ヒメトウショウブ」との交配種。名前の由来は「ヒオウギスイセン」に似ているが、小さくて可愛らしいということからである。花の色は全体が「緋色」で、花の形は「ヒオウギ」に似ている。つまり「スイセン」と呼ばれる理由は花の形ではなく、「ヒオウギスイセン」から生まれたからという理由しかない。葉の形は水仙に似ているから「〜スイセン」でも問題は無いが、それなのに「檜扇」という元々は「葉の形」にちなんだ名前を付けることで捻れが生じている。「檜扇」のイメージがどんどん遠ざかっていく。

そして以前取り上げた「ヒメヒオウギ(姫檜扇)/アヤメ科/フリージア属」(南アフリカ原産の帰化種)である。もう「檜扇」を連想させる要素は見当たらない。花の形が「ヒオウギ」に似ていると言えなくはないが、それでは「檜扇」と名付けた歴史が見えてこない。これでは「姫緋扇」と表記されても、致し方ない。
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