忍者ブログ

雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

エノコログサと五行思想

エノコログサ(狗子草/狗尾草)/イネ科/エノコログサ属
在来種。ユーラシア大陸原産。花期8〜9月

縄文時代の後半から弥生時代に日本にやって来たと考えられています。縄文の前期が除外されているのは今のところ遺跡から出土していないからでしょう。
人の考えることは大体同じ
狗尾草は漢名(中国語)です。中国では狗(イヌ)の尻尾に似ているから名付けられたようです。それにしても狗尾はエノコロとは読めませんが。和名は源順『倭名類聚抄』(934)の狗尾草に「和名恵沼古久佐(エヌコクサ)」と記載があるようですので、ここら辺りが始まりでしょう。「恵沼古久 佐」の漢字に意味はなく、発音を表してるだけなので、今なら「狗(犬)子草」とでも書くのでしょうね。でもイヌがエノになるのも変だし、大体コロとは何のことでしょうか。iMac(2009年)に標準搭載の国語辞典には、コロは子等(こら)の昔の方言で万葉集に歌があると載っています。意外ですがiMacの辞書は植物に関して詳しく解説しています。つまり「イヌコロ(犬の子等)」です。そういえば犬コロって今でも言うわー、猫コロとは言わないけど。想像するとイヌコロ→エヌコロ→エノコロと変化したと。うーん、自分で言っておいて微妙な感じだな。話題を変えよう。中国と日本は犬の尻尾と表現し、英語ではfoxtail grass(キツネの尻尾草)、アイヌの人たちはチャッペ(猫)と呼んでいたそうです。いずれにしても動物の尻尾です。日本では別名の「ねこじゃらし」の方が有名だと思います。犬の尻尾で猫を遊ばせる訳です。

エノコログサも食べられる
この草は粟(あわ)の原種と考えられており稲作が始まった弥生時代以前の日本人の食を支えていました。アワと並んでヒエ、キビが主要な穀物です。飢饉の時には大活躍したそうです。もっとも3つを並べられても私なんぞは区別もつきませんが。アワはお菓子の粟おこしや「濡れ手で粟」の諺で有名。キビは桃太郎の黍団子(吉備団子は語呂合わせ)、ヒエは宮中の新嘗祭につかう重要な供物。ところが時代が下った今ではそれらは雑穀と呼ばれています。また「雑」扱いだな。そういえば、うんと昔に飼っていた小鳥の餌に入っているゴマより小さな黄色い丸いのは何だったのかな。器用に殻だけ残して食べていた記憶がある。また最近では五穀米とか十穀米とかいうものが健康食として人気を集めているようですが。
季節が五つで方角も五つ、それぞれ四つはわかるけど。
「五穀豊穣」など、昔から豊作を神仏に祈願する風習がありますが、なぜ五なのか?というと中国からきた五行思想(木・火・土・金・水の要素が世界を形成し運行している)の影響があるそうです。季節や方角など、あらゆるものを五つで規定したのです。では問題です。五つの季節とは春夏秋冬と何? 五つの方角は東西南北とどこでしょう。チッチッチッチッ、ブー。答えは季節は土用、方角は中(中心)です。

五穀の内容は国(昔の中国)や時代によって違うのだそうです。日本でも「イネ(米)・ムギ・アワ」は共通で残り2つが「大豆・小豆」(古事記)、「ヒエ・豆」(日本書紀)となるそうです。無理して五つを決定するのではなく、昔の人も形式的な表現と捉えていたようで、時代に合ったものを取り入れたのでしょう。蛇足ですが、最近よく聞く「五穀米」はどこかの会社の商品名です。某放送局では使用できませんね。


追記&訂正:読みにくい文章を加筆・訂正しました。(2015.11.12)
エノコログサはいくつか種類がありますが、微妙な違いなのではっきりとは特定できませんでした。また、写真を追加しました。(2015.12.12)
イラスト:zassouneko
PR