アメリカオニアザミ(亜米利加鬼薊)/キク科/アザミ属
ヨーロッパ原産の帰化植物 1〜2年草 花期は6〜9月 草丈は60〜200㎝
ウィキペディアによると「ケサランパサラン」は「江戸時代以降に発生した民間伝承上の謎の生物とされる物体」とある。つまり近世になって現れた不思議なものの一つである。色は白くて形は丸く、か細い毛が放射状に広がっている。そんな話をかなり昔に聞いたり子供向けの雑誌などで読んだ記憶がある。
そういえばエンゼルヘアーというのもあったな。白い糸のようなものが空から降ってくるが、それに触れるとたちどころに消えてしまうという。子供の頃は空を見上げるたびにエンゼルヘアーを探していたように思う。時折、白い糸のようなものが降ってくることがあったが、それは触っても消えることはなかった。おそらく蜘蛛の糸か植物の一部だったのだろう。
突然だが下の写真が「アメリカオニアザミ」の種子である。
これが「ケサランパサラン」の正体だと言っているのではない。正体はいまだ不明だし、分からないままにしておいた方がいいような気がする。画像検索をするとこれと似たようなものやそうでないものが山ほど出てくるので、その中の一つと考えていただきたい。この写真をあえて載せたのは「ケサランパサラン」の伝承の拡散に「アメリカオニアザミ」が一役かっていそうな気がしたからだ。
「アメリカオニアザミ」が日本で最初に「確認」されたのは北海道で1960年頃のことだ。「確認」というのは専門家や研究機関が特定したということである。おそらく棘のせいで牛が怪我をしたのだ。乳牛の場合、ストレスがあると乳の出が悪くなったりするという。そうした被害が重なって行政による「確認」にまで至ったのだろう。人目につかない場所に生えていたら誰も気づかない。
ウィキペディアによると1970年代後半に「ケサランパサランブーム」があったという。「アメリカオニアザミ」を初めて確認してから15年近く経っている。おそらくその間に全国に分布を拡大し、あちこちに種子を飛ばしたのだ。タンポポの種なら見覚えがあるが、それより何倍も大きいのである。フワフワと浮かんでいるこれを見て興味を抱かない子供はいないだろう。多くの子供が目にすればいずれ話題にもなる。それに新しく日本にやって来た植物であるから、世間にはほとんど知られていない。つまり未知のものなのだ。それが目の前に実体として現れたとすれば、もう「ケサランパサラン」としか考えられないではないか。
子供時代に限らず、今でも空には何かが飛んでいる。大半は植物か蜘蛛の糸、動物の毛などだろうが飛んでいることは確かである。いつの日か、何かが空から降ってくるかもしれない。なにせ空には蓋がなく宇宙にまで繋がっているのだから。
写真:zassouneko