チガヤ(茅萱)/イネ科/チガヤ属
在来種 アジアの温帯・熱帯に分布 多年草 30〜60cm 花期5〜6月 別名/チ、カヤ、チバナ他多数 漢名/白茅
すべての生物を対象とした「世界の侵略的外来種ワースト100」の植物部門にチガヤはノミネートされている。そして「世界最強の雑草」という称号まで与えられているようだ。日本の現状を見るとそんな植物とは思えないのだが、他国に行くと猛威をふるう外来種に変貌するらしい。
チガヤの「チ」は「千(せん)」からきており、群れて咲くためその名がついたと言われている。それなら「万」でもいいじゃないかと、つっこみたくなる部分である。また穂や葉先が赤っぽくなるので「血萱」という説もある。まあ由来はともかく、千年以上昔から「チ」という発音で呼ばれていた植物であるのは間違いない。千年前の書物にはチガヤに対して「知」「智」という字が使われているという。この「茅萱」の「茅」は草冠と矛でできているが、矛は「矛盾」でおなじみの矛(ほこ)で、槍のようなものである。葉の形がそう見えるので、この字があてられたそうが、穂の形の方が似ているんじゃないかと思う。
6月に「蘇民将来」の伝承に由来する厄除け行事の「茅の輪くぐり」が行われるが、今では子供の無病息災を祈願することも多いだろう。子供は突然発熱したり具合が悪くなったりするしなあ。大人は自分でなんとかすればいいし。また「チマキ食べ食べ兄さんが〜」のチマキは本来はチガヤの葉を巻いたもの(茅巻)である。
東区平田町の交差点の四隅にある緑地帯は、東西南北のそれぞれの場所で特定の雑草たちがテリトリーを形成している。
北西の角(ピザ屋の前)は地を這うような低木が植えられており、雑草はあまり生えていないが春にはツクシが顔を出す。北東(銀行の前)はイヌムギが独占していたが、2018年の猛暑以降は勢いが弱くなったようだ。南東の角はホソムギが多く生えていたが、これも猛暑のせいか見かけなくなった。そして南西の角がチガヤの領地である。そこから南に続く緑地帯はアオカモジグサのテリトリーだが、今年はほとんど生えておらず南西の角(ホソムギの領地だった)で細々と暮している。去年(猛暑の翌年)は普通に見かけたのだが。
さて、5月の声が聞こえるようになると猛然とチガヤが姿を表す(冒頭の写真)。
上は数年前の写真だが、道路をはさんだ右上にもチガヤが生えている場所がある。そこが中央分離帯である。その分離帯のほんのわずかな隙間からもみっしりと生えている(下の写真)。
道路の管理上の問題だと思うが、その場所のチガヤを刈り取って再び生えてこないようにと厚いシートで覆った。去年の暮れか、今年の初め頃だったと思う。それを見た時にすぐに「無駄なことを」と思った。相手はチガヤである。そして、その予想は当たった。
接着剤で貼り付けたと思われる厚いシートをものともせず、しっかりと葉をのばしている。いずれ穂を出すだろう。シートは数十メートルに渡って施工してあるが、他の場所も同じような事態になると予想される。「世界最強の雑草」の呼び名は伊達じゃないのである。
面白いのはこの「世界最強」のチガヤでさえ、日本国内ではバランスをとって繁殖しているということだ。冒頭に交差点の四隅の雑草のテリトリーについて述べたが、チガヤが他の場所で繁殖を始める気配は今のところ感じられない。たまに離れた場所に数本咲いているのを見かけるが、そこから群生が始まるということにはなっていない。これが固有の生態系というものかな。