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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ヘクソカズラが臭くない

ヘクソカズラ(屁糞葛)/アカネ科/ヘクソカズラ属
在来種。花期は8〜9月。別名ヤイトバナ、サオトメバナ。

当事者の植物からすれば、いたく不名誉な名前であるが、千切った葉の匂いを嗅げば誰もが納得する名前でもある。私も深く納得した。ところが最近になって、その匂いが薄くなっているような気がするのである。

去年あたりから匂いの薄い「ヘクソカズラ」を多く目にする。「目にする」じゃないな、見ても分からないしな。「鼻につく」は違う意味だし。とにかく昔に嗅いだインパクトがないのである。

最初のきっかけは2年前の初夏だ。まだ若いつる性の植物が生えていて、それが「ヘクソカズラ」のような気がしたので確認のため匂いを嗅いでみた。青臭い植物の匂いはあるが「ヘクソカズラ」の感じは受けない。念のため5〜6枚の葉を千切って匂いを嗅いでみた。これでようやく「ヘクソカズラ」だと分かったが、匂いは薄い。その時はまだ植物が若いから匂いが薄いのだと思っていた。


今年の8月上旬に近所で「ヘクソカズラ」の花が1輪だけ咲いた。葉をむしって匂いを嗅いだのだが、やはり匂いは薄い。やがて9月になるとあちこちで「ヘクソカズラ」の花が満開である。気になって匂いを嗅いでみる。おかしい。昔初めて嗅いだ時の衝撃がない。

少し考えてみた。これは自分の嗅覚が衰えているのではないだろうか。若い人には聞こえる高い周波数の音が年をとると聞こえなくなってしまうのと同じことである。だから同じ葉を若い人が嗅げば「うわっ臭っ」ということになるのかもしれない。最近問題になった衣類の芳香剤のキツーイ匂いも、使っている人の鼻が衰えているのかもしれない。それに嗅覚には「慣れ」というものがある。他人の家に行った時に感じる匂いやペットの匂いなどがそうだ。特にペットの匂いなど、よくこんなところで飯が食えるなと感心するが、本人は慣れてしまって何の匂いも感じないのである。嗅覚はあてにならない。

8月上旬の「ヘクソカズラ」

嗅覚は個人の性格にも左右される。香り一つとっても好き嫌いがある。つまり「あなたの好きな香りを他の人も好むとは限らない」のである。見たくないものは視線を逸らせばいい。嗅ぎたくない匂いなら鼻をつまめばよいが、そうするとニオイの元の本人が怒るのである。困ったものだ。自分には非がないと思っているからである。

「ヘクソカズラ」の悪臭が気にならないのは良いことのように思える。不快な思いをしなくて済む。だが「ヘクソカズラ」は周囲に悪臭を放っているわけではない。葉や茎を千切ると臭うのだ。つまり、こちらから積極的に働きかけているのである。あの匂いは「ヘクソカズラ」のアイデンティティでもあるのだ。

「何でそんなに臭い匂いにこだわるのだ」と聞かれても、私にもよく分からないのである。

写真:zassouneko
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