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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ヘクソカズラの憂鬱

ヘクソカズラ(屁糞葛)/アカネ科/ヘクソカズラ属
在来種。花期は8〜9月。別名ヤイトバナ、サオトメバナ。

たいへんな名前が付けられてしまいましたが、千切った葉の匂いを嗅げば誰もが納得するでしょう。ただサイトによっては「ヤイトバナ」で表示して「ヘクソカズラ」を別名で紹介している場合もあります。武士の情けでしょうか。


「葛」を「蔓」としている場合もいくつかあります。両者とも「かずら」とも読み、つる性の植物の意味になります。ただ「蔓」は「つる」と読むと、先端のヒゲの部分を指します。また「蔦(つた)」という漢字もあり、これもつる性の植物のことです。面倒くさいです。

「ヘクソカズラ」は10世紀頃の「本草和名」では漢語「女青」に対して和名「加波祢久佐(カバネグサ)」との記述があり、同時期の「倭名類聚抄」では、女青は「加波禰久佐」、細子草は「久曽加豆良(クソカズラ)」とあります。

この不名誉な名前は周囲に悪臭をまき散らしているからではなく、葉や茎を切り取った時に強く匂うからです。花は可憐な感じがするのに、手折って匂いを嗅いでみたら悪臭だったと。期待を裏切られたことへの八つ当たりでしょうか。いずれにしろ進化の過程でこの匂いが必要だったのでしょう。防虫効果があるのかもしれません。

別名の「ヤイトバナ」の「ヤイト」はお灸のことで、花の中心がうっすらと赤く、お灸の跡を連想させるからだそうです。「サオトメバナ」の「サオトメ」は「早乙女」で田植えをする若い女、少女の意味です。可憐な花が連想をよぶのでしょう。

この草は匂いを別にすれば、花は可憐な印象です。冬になる頃には実がついたままで、すっかり乾燥しきっています。そうなると悪臭はしなくなるのだそうです。趣のある風情が好まれ、お茶会の茶花(ちゃばな)などに利用されるそうです。その際の名前は当然「サオトメバナ」でしょう。お茶会に「屁と糞」は似合いません。利休さんは、どう呼んだでしょうかね、少し興味があります。一休禅師なら「屁糞」でしょうけどね。

写真を追加しました。11月の中旬頃の「ヘクソカズラ」です。実がついています。(2015.12.12)
イラスト&写真:zassouneko
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