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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ヒメキンギョソウに質問です/2019.7.28

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ヒメキンギョソウ(姫金魚草)/オオバコ科/ウンラン属
1年草 帰化種 地中海沿岸、ヨーロッパ原産 花期は3〜6月 別名:リナリア(学名のLinariaから)

この花の印象はどこか寂しい。春の始めに見かけることが多いが、いつも荒れ果てた場所にポツンと咲いている。全体を見てもどこか弱々しく、鮮やかな花の色がかえって物悲しい雰囲気を漂わせている。また、ひどく場違いな感じを受ける。お前の咲くべき場所はここではない、と言いたくなる。
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そういった感傷などどこ吹く風、この「ヒメキンギョソウ」はとっくに帰化していたのである。なのでどこで咲こうが勝手である。それよりも他の名だたる雑草たちに先んじて花を咲かせるとはなんと天晴れな。人は(人じゃないが)見かけによらないとはこのことだ。
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「ヒメキンギョソウ」より花が大きくぷっくりとしたものが「キンギョソウ」である。この「キンギョソウ」は1856年、「ヒメキンギョソウ」は1862年に渡来している。東京国立博物館に幕末ごろに描かれた「遠西舶上画譜(馬場大助)」という美しい花の画集が所蔵されており、ネットから見ることができる。そこで「キン魚草」は確認できた。今の「キンギョソウ」に比べると花の数がずいぶんと少ない。現在のものはかなり品種改良が進んだ結果だと言える。一方の「ヒメキンギョソウ」の絵は見当たらなかったが遣欧使節団が持ち帰った種子のリストに名前が載っているという。

さて、ここまで調べてきたが、これは久し振りに花の名前で遊べるぞと嬉しくなった。「花の名前で遊ぶ」とは内容が想像がつかないであろうが、以下のようなことである。

①もし「ヒメキンギョソウ」と「キンギョソウ」の渡来の順番が逆だったら、どんな名前になったのだろうか。
当然のことながら両者とも日本人が初めて目にする花なので日本語の名前はついてはいない。なので命名をしないといけない。それに「ヒメキンギョソウ」は「キンギョソウ」あっての名前である。「普通のキンギョソウ」→「小さなキンギョソウ=ヒメキンギョソウ」という流れになる。だから渡来の順番が逆になった時に「ヒメキンギョソウ(まだ日本名はついてはいないが)」を見て、「ははーん、これより大きな花があって、やがて渡来するな」などとは普通は考えない。もしそう考えたのならそれは現地語を訳した結果である。

そこで英語名を調べると「ヒメキンギョソウ」は「babysnapdragon」、「キンギョソウ」は「snapdragon(スナップドラゴン)」だと分かった。花の名前はそうそう変更されるものではないから、当時もこの名前だと断定してもいいだろう。ここでも「普通→小さい(baby)」の法則は守られている。

さて、「snap」は「指をパチンと鳴らす」、「dragon」は竜、これが組み合わさった「snapdragon」は「ブランデーが燃えている皿から干しブドウをつまむクリスマスの遊び(goo辞書)」という意味になる。よくわからん遊びである。遊び自体に意味を求めるのは無粋であるから追及はしないが、その遊びがどうして花の名前になるのか見当もつかない。花の形を炎に見立てたのだろうか。同じ名前の半導体の商品があるが、こちらの方が納得できる。高温(燃えるブランデー)の中から取り出し切り分けたシリコンウエハー(レーズン)という比喩が成立するからだ。比喩は成立するが、そこに「金魚」のイメージはない。だから「金魚草」は日本人が見た目で命名したのである。

①のように渡来の順番が逆だったら「ヒメキンギョソウ」は「キンギョソウ」に、「キンギョソウ」は「オオキンギョソウ」という名前になっていたかもしれない。いやいや、「ヒメキンギョソウ」は金魚には見えないから全然別の名前になっていた可能性もある。英語名を参考にしても「babysnapdragon」から「金魚」は生まれてこないのである。こうやって名前で遊ぶのである。

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マツバウンラン(左)とツタバウンラン(右)。同じオオバコ科だけあって花の形がよく似ている。
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東区出来町のJRの線路脇。これは種を蒔いたのか勝手に生えたのかどっちだろうか。

写真:zassouneko
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