在来種 夏緑性(秋には枯れる) 中国名:海金沙 英名:Japanese climbing fern
日本には2種(本土には1種)しかいない珍しいシダ類
以前から気になっていた雑草である。葉や全体の雰囲気から、おそらく「シダ類」なんだろうなと考えていたが確信はなかった。なぜなら、この草には「ツル」があるのだ。「シダ類」といえば「ワラビ」や「ゼンマイ」、正月飾りの「ウラジロ」などの形が真っ先に頭に浮かぶので、「ツル」を持つ「シダ」があるとは想像しにくいのである。これは珍しい「シダ」であって、世界中を探しても40種ほどしか確認されていない。日本には2種しかなく、そのうちの1つがこの「カニクサ」で、もう1つは八重山諸島に生えているという。それほど珍しい「カニクサ」であるが、あちこちでよく見かける意外と庶民派で気さくな雑草である。
名前の由来は「この草のツルを使って蟹を釣ったことから」などと書いてあるが素直に納得はできない。そもそも「ツル」が釣り糸の代用になるのかが疑問だし、わざわざ「蟹」と限定するのも怪しい。
暑い国から来た調度品
タイの王女が「カニクサ」の仲間(タイに生えるシダ)の「ツル」で編んだハンドバッグを愛用しているという話をブログで見つけた。他の記事も探したが、出てくるのは三宅一生の現代的なバッグのことばかりで、この話の確証を得ることはできなかった。次にバリ島で、家具やバッグなどの生活用品を「アタ」という名の「シダ」を編んで作っているとの記事を見つけた。写真を見る限りでは「ラタン(ヤシ科)」と呼ばれる籐(=トウ/藤ではない)製品によく似ている。いずれも暑い夏にぴったりの調度品だ。生活用品が作られるぐらいだから「シダ」の中には丈夫なものがあるといえる。これで「カニクサ」にも、釣り糸としての可能性が出てきた。