タチイヌノフグリ(立犬の陰囊)/オオバコ科/クワガタソウ属
ヨーロッパ・北アフリカ・西アジア原産(サイトによってまちまち)の帰化種 1〜2年草 花期は4〜6月 学名:Veronica arvensis
最初に。ご存知だとは思うが「フグリ」とは「陰嚢(いんのう)」のことである。「睾丸」や「金玉(可愛らしくキャン玉と呼んでもいいが)」のことではない。「玉」と「袋」をセットにした表現が「陰嚢」である。
これまた小さな花である。最初に見た時は「フラサバソウ」か「ノミノツヅリ」だと思い、そのまま通り過ぎるところだった。よくよく見れば茎は立ち上がっているし花の色が紫っぽい。「フラサバソウ」は地面を這うようにのび、花は水色。一方「ノミノツヅリ」の花の色は白である。いろいろと微妙に違うぞ。
上の写真が「タチイヌノフグリ」、下が「フラサバソウ」。裸眼だとよく見えないが、立っているか寝ているかの違いは認識できる。
この花は1870年頃に東京で確認されたのが最初だという。明治になってすぐのことだ。ヨーロッパからの荷物に紛れ込んでいたのではないかと言われており、今では全国に分布を広げているそうな。その割に初めて見たような気がするが、小さ過ぎて気がつかなかったのかもしれない。加えてこの花、お昼を過ぎると花を閉じてしまうという。そうなるとますます目立たなくなる。
名前の由来は「立ち上がるイヌノフグリ」である。「イヌノフグリ」という在来種に似ているが、まっすぐ立ち上がる特徴があるのでこの名がついた。だが、残念なことに在来種の「イヌノフグリ」は今ではあまり見かけなくなってしまったということだ。そうなると「名前の由来の連鎖」が途切れてしまうことになる。「イヌノフグリ」を知っていれば「なるほど立ち上がっているな」と納得できるのである。
花の様子が分かりづらいと思うが、私の古いデジカメでは接写が厳しいのである。ご容赦いただきたい。「フラサバソウ」より花の色は濃い。それにしても小さいなあ。
学名の「Veronic」は「聖女ベロニカ」のことである。キリストが十字架を背負いゴルゴダの丘に向かう際にベロニカがその額の汗を拭ったことから、後年聖女に列せられることとなった。「聖女」と「陰嚢」か。えらく落差があるなあ。
最後に恐ろしい話を。睾丸を握り潰すと「パン」と音がするそうである。これは中国で実際にあった話で、潰された男(当たり前か)は気絶したそうである。興味があれば検索していただきたい。巷間「出産の痛みは男には耐えられない」という話をよく聞くが、男はそれを体験しようがないので納得せざるを得ない。だが、これからは言える。「金玉を潰されると気絶するほどの痛みがある」と。これでお互い様である。何がお互い様かよく分からんが。
写真:zassouneko