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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

「決明(ケツメイ)」とは何だ?/2018.9.2

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上の写真は「アレチケツメイ(荒地決明)」マメ科/カワラケツメイ属
北アメリカ、西インド諸島原産 最近になって帰化種と判明 おそらく多年草

日本に「カワラ(河原)ケツメイ」という在来種がいる。「アレチケツメイ」は「カワラケツメイ」に似ていて、荒地に生えているので「アレチケツメイ」になったようである。河原も荒地もさほど変わらんような気もしないではないが、そんなことはどうでもいい。問題は「決明」だ。なんだよ「決明」って。どんな意味があるのか見当もつかないぞ。中国から伝わった名前だそうだが、「三国志のエピソードが元だ」と言われたら納得してしまいそうだ。

「決明」を検索すると「エビスグサのこと」とある。マメ科センナ属の植物である。漢字で書くと「夷草(恵比寿でも可)」で、中国以外の異国から来た草という意味になる。

この「ケツメイ=エビスグサ」は薬草でもある。乾燥させたものを「決明子(ケツメイシ)」と呼ぶ。同名のバンドがあるが、この生薬の名前が元らしい。この生薬「決明子」は「エビスグサ」だけのものではなく、「◯◯ケツメイ」とつく植物を乾燥させたものも「決明子」になる。「アレチケツメイ」は新参者だから、利用できるかどうかは定かではないが。また、「ハブ茶として利用」という記載もあった。だが、本来なら「ハブ茶」になるのは同属の「ハブソウ」で、「エビスグサ」とは別の植物である。今ではごっちゃになっていて「まあ、どっちでもいいんでないの」という感じである。「◯◯ケツメイ」の種子を使用する茶は「ハブ茶」とよぶそうだ。

次に、この植物群に「決明」と付くようになった経緯を考えてみたい。

まずは「決」である。検索すると「決」の左側の「さんずい」は水の流れ、右はコの字形に抉(えぐ)られた堤防を表しているという。つまり「決」の字は「抉(えぐ)り取る」という意味と、「水の流れが堤防を抉る」という直接的な意味になるらしい。また、ずいぶんと使い所が限られた漢字だな。現在において、そんな意味で使われることがあるのかと思ったが、「堤防が決壊した」で使っている。つまり「堤防が抉り取られて壊れた」というわけだ。「抉り取る」の意味で使われる例が他にもあるのかな。

堤防が決壊すると辺りの景色が一変する。決壊前と後では「はっきり」と様子が違う。やがて「決」は「はっきり」「きっぱり」の意味を持つようになったという。「決定」「決断」「決着」などがそうである。

さて、次は「明」だ。この字の左は、今は「日」だが昔は窓を表す漢字が使われていたという。夜、窓を開けると月明かりが入り、部屋が「明るくなる」ので、やがて「明るい」という意味を持つようになったという。昔の窓はガラスではなく板なので、開けば月明かりが入るのだ。昼に窓を開けても明るいじゃないかと思うのだが、そう単純な話ではないのだろう。昼が明るいのは当たり前だが、夜、空に煌々とした満月がかかる日は多くはない。普通なら暗い夜なのに月明かりがあるのが逆に印象に残るわけである。

国会図書館のデジタルライブラリーで「李時珍」の「本草綱目」を閲覧できる。この本は16世紀の末、明の時代に刊行された最も有名な本草学の書物である。数年後には日本にも初版が輸入されたという。薬オタクであった徳川家康も読んでいたらしい。

その第13冊(第16巻)の30コマ目に「決明」が載っている。冒頭に「時珍曰此馬蹄決明●(読めん)以明目之功而名〜」とある。漢文はよく分からんので勘で訳すと、「李時珍さんが言うには馬蹄決明(エビスグサのこと)には目を良くする効果がある」かな。また、「石決明も同じ効果があるよ『草決明石決明皆同功者』」とも書いてある(多分)。「石決明」とは貝殻などから作られており、「決明」と同じ効果があるらしい。

素人の訳では心許ないので「跡見群芳譜/跡見学園女子大学」を引用する。それには「目を明かにする功を以て名づく」とあった。つまり目に効果があるから「決明」と名付けられたのである。「目を明らかにする」が「決明」らしいが、何を「抉り取った」のかな。暗闇だろうか。

生薬専門のサイトで「エビスグサ」の効能を見ると「便秘や肝臓病、腎臓病など」とあり、「目に効く」とは書かれていない。おかしいなと思ったら、薬を飲むことで病から回復し、やがて目の充血が取れ、よく見えるようになったことから「目に効く」となったらしい。なんだか、こじつけのような気がするぞ。この歯切れの悪さは「本草綱目」の「決明」の解説が原因だろう。「目を明かにする功を以て名づく」と書かれてあるのだから、それに沿った効能を出さざるを得なかったのではないだろうか。なんせ「李時珍」の「本草綱目」である。これほどのビッグネームはそうそうないだろう。

「ハブ茶」を健康食品として紹介するサイトも数多くある。大抵はトップに「エビスグサ」の写真が貼られていて、便秘、眼精疲労、目の充血などの効能をうたっている。成分を載せているサイトもあるので見てみると、その中に「ビタミンA」もある。このビタミンAは「夜盲症(鳥目)」に効果がある。逆に言えば、このビタミンが不足すると「夜盲症」になるのである。「目に効果がある」というのは、このことじゃないのかな。「エビスグサ」には無いが、「カワラケツメイ」の薬効には「夜盲症」が載っている。

と、「決明」について考えてみたが、この話を信じてはいけない。素人が適当に言っているだけである。まあ、「決明」なんて言葉は一生涯使うことはないだろうから問題はないと思うが。

写真:zassouneko
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