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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ヒメクグ/神話の世界へようこそ/その1/2018.8.18

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ヒメクグ(姫莎草)/カヤツリグサ科/カヤツリグサ属
在来種 多年草 花期は7〜10月 草丈は10〜25㎝

2年前の夏、初めてこの植物に出会った。さっそくブログで紹介したのだが、その時には名前の由来がはっきりしなかった。
●イザナギ・イザナミの間に「ククノチ」という神がおり、「木の精」「木の神」であるという説。
●神は「男性神」「女性神」に分類できるが「ククノチ」は「中性」であるという説。
●「クク」とは「木々(キキ)」のことではないかという説。
上記のように「クク」に関する情報はいくつかあるが、それが「ヒメクグ」と関わりがあるのかどうかが分からなかったのである。言葉が似ているだけということもある。

今年の春になって思わぬところから情報を得ることができた。KADOKAWAが春と秋に出している「怪」という本に連載されている荒俣宏氏の自伝の中に「ヒメクグ」の話があったのだ。そしてそれはヒントになるという程度の話ではなく、答えそのものが載っていたのである。

一つおことわりをさせていただく。「クク」「グク」「クグ」は微妙に違うが、全て同じである。前や後ろに言葉がつくと「◯◯グク」、「クグ◯◯」と濁音がつくのである。
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さてと。えー、すべての始まりは古事記の中のオオクニヌシの国造りの場面からである。以下の文章はウィキペディアを参考にして加筆したものである。

『オオクニヌシが出雲の御大岬(美保岬)にいたとき、海の向こうから小さな神がやって来たが、名を尋ねても答えず、誰もこの神の名を知らなかった。このとき、かかしのクエビコ(久延毘古)なら知っているはずだと、オオクニヌシに注進したのがヒキガエルのタニグク(多邇具久)であった。やがてクエビコ(久延毘古)から、その小さな神の名は「カミムスビ(神産巣日神)の子のスクナビコナ(少彦名神)」であると知らされる』

「名前を聞かれたら答えればいいのに」と素人は思ってしまうが、そこはそれ、答えない理由があるのである。それが何かは知らんが。「ヒメクグ」のみを考える時に、そこまで考える必要はないだろう。神の名前の漢字の文字が資料によって違うのも気にしない。いろんなパターンがあるからだ。ついでにオオクニヌシもスクナビコナもカミムスビも省いてしまう。今、必要なのは「カカシのクエビコ」と「ヒキガエルのタニグク」なのである。この両者とも「神である」と書かれている。

もっとも、古事記のどこにも「カカシ」「ヒキガエル」とは書かれていない。後世の者がそう判断したのである。ウィキペディアで「クエビコ」を調べると「田・農業の神、土地の神、学業・知恵の神」とある。そこから、田を守る「かかし」になったのだと推測ができる(逆もあるが)。ところが、「タニグク」にはなんの記載もない。何を担当している神だか分からないのである。研究者はそれに「谷蟆」「谷蟇」の字をあてた。これは「谷にいるヒキガエル」という意味になる。

つまり、この話の後半を解釈すると「全国津々浦々に出没し、地に伏せてあたりをうかがう『ヒキガエル』が見聞きしたものは最終的には『カカシ』に伝わり、そこに情報が蓄積されている。なので彼に聞けばたいていのことは分かる。事実、神の名前も知っていた」ということになる。

だが、ちょっとピンとこない話である。谷とは氷河や川の流れが山を削ってできた場所のことではないのか。そんな場所が情報収集に向いているとは考えられない。いろいろな話を集めるなら人通りの多い町中だろうに。そもそも渓流に住むカジカガエルならまだしも、谷にヒキガエルがいるのだろうか。ヒキガエルは水中を生活の場にはしていないのだ。
※前述した「怪」に「ヒキガエル」が選ばれた理由が載っているのだが、長くなるので省略した。

さて、ヒキガエルの話題が続いたが、賢明な読者の中には「ヒキガエルのタニグク」と植物の「ヒメクグ」に何の関係があるのかと疑問に思われている方もおられるだろう。「カカシ」と「ヒキガエル」の関係性が不明なのである。そんな民話や伝承があったかな。だが、それらの謎を解いたのは前述した雑誌「怪」の文章である。それによると「タニグク」は「ヒキガエル」ではなく「雑草」だったのである。

※続く

写真:zassouneko
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