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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ホソエガラシをロンドンロケットと呼ぶ理由/2018.4.4

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ホソエガラシ(細柄芥子)/アブラナ科/キバナハタザオ属またはカキネガラシ属(どちらもSisymbrium)
帰化種

オーストラリア人らしき方のホームページの一部を機械翻訳してみた。若干怪しげな日本語に翻訳されたが大意は判断出来る。それによると1666年の「ロンドン大火」の後に「London Rocket」が大量発生したという。ウィキペディアによると、この火事でロンドンの8割以上が被害に遭ったという。「ロンドン大火(1666年)」「明暦の大火(1657年)」「ローマ大火(西暦64年)」が世界の三大大火という記事もあった。誰が決めたんだか。この「世界三大◯◯」は他にもたくさんあるが、日本人の性質として「決めずにはいられない」ようである。これが日本独特のものだと判断したのは「世界三大美女」に小野小町が入っているからである。世界の人は小野小町なんか知らんだろうに。

話がそれた。山崩れの後の荒れ地などに真っ先に侵入する植物を「先駆植物」という。そういった場所を好む植物たちである。「ホソエガラシ」もそれと同じかどうかは知らないが、火災後の土壌が繁殖に適していたのは間違いないだろう。また、この大火より300年近く後の第二次大戦後のロンドンの焼け跡からは「イヌカキネガラシ」が多く生えてきたという話を日本人ブロガーの方が紹介されていた。どうやら「カラシ類」は焼け跡が好きなようだ。ちなみにロンドンでは大火をきっかけに木造建築を止めたそうだ。それまで木造だったのは意外だな。一方、「ロンドン大火」の9年前に「明暦の大火」に見舞われた日本は木造建築を止めなかったが、これは単に建築材料が無かったからだと思う。いかん、また話が逸れていく。

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「ホソエガラシ」と「ナガミヒナゲシ(画面中央下の赤い花)」。この「ナガミヒナゲシ」はアルカリ性の土壌を好むので、コンクリート(強アルカリ性)の多い都会に向いている。

大いなる疑問がある。なぜ「ロンドンロケット」という名前なのだろうか。焼け跡に大量発生したという情報だけでは名前の由来など想像もできない。仕方がないので「ロケット」の方から調べてみることにする。「ロンドン」は地名なので調べる必要はない。植物とは別の「ロンドンロケット」があるならば、最初の検索で引っかかったはずだ。

そもそもその時代に「ロケット」があったのだろうか。SF小説の始祖といわれるジュール・ヴェルヌが「月世界旅行」を発表したのはロンドン大火から200年も後である。しかもロケットは登場せず、そのかわり巨大な大砲の弾に乗り込んで月へ向かったのだ。では当時ロケットが無かったかというと、そうとは言えないのである。ウィキペディアによると「1379年にイタリアの芸術家兼技術者であるムラトーリが西欧で初めて火薬推進式のロケットを作り、それを形状にちなんで『ロッケッタ』と云々」とある。これがロケットの語源だろう。ならばロンドン大火の頃にはロケットという言葉は人々に知られていたかもしれない。

前述した文章の中に「西欧で初めて」と書いてあるが、すでに中国に「火箭(かせん)」というものがあったからだ。これは矢にロケット花火のようなものをくくりつけて飛ばす武器の一種である。で、飛んでいって爆発するかといえば、何も起こらないのである。意外なことだが火薬をドッカーンと効果的に爆発させることができるようになったのは、かなり後の話である。ノーベルがダイナマイトを発明したのが、ヴェルヌの「月世界旅行」発表とほぼ同時期なのも興味深い話だ。それより200年も前の時代には、火薬を使った噴射装置で人を空へ運ぶことができるとは夢にも思わなかっただろう。ずっと後年のヴェルヌでさえ、ロケット花火より大砲を選択している。

「ロンドンロケット」という名前は、どこかあっけらかんとしている。能天気でもいいし明るく前向きなでもいい。つまり、大火という災害があったから「ロンドンロケット」という名前が付いたのではないのだ。以前より、その名前だったのだろう。文献をあたればいいのだが、それは今の私には手に余る作業であるし、だいいち能力もない。

さて、そろそろ結論(個人の空想であるが)を出すことにしよう。この「ロンドンロケット」とはロケット花火のことである。花の部分がロケット本体で、種と茎を乱れ飛ぶ火花の光跡や噴射された煙に見立てたのだ。「ホソエガラシ」の全体の形は数発まとめて発射されたロケット花火がてんでバラバラな方角に飛んで行っている様を表しているのである。と、思うのだが。どうかなあ。
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追伸:検索している中に「宇宙兄弟」のサイトがあった。花の名前は出てこないが、ロケットに関することで私の考えと似たような文章があったのでちょっとホッとした。さて、ロケット花火といえば、少し離れた場所に建つ2つの教会の間で、相手の建物に向かって数万発のロケット花火を打ち合う祭りがギリシャにあるそうだ。日本でも栃木県の秩父に「龍勢」と呼ばれるロケットを打ち上げる祭りが古くから続いている。みんなロケットが好きなのである。いわんや昔の人もおや。って、この「おや」の使い方は合ってるのかな?勢いで書いたけど。

写真:zassouneko
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