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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ノハカタカラクサ/白い露草は名前がややこしい

ノハカタカラクサ(野博多唐草)/ツユクサ科/ムラサキツユクサ属
南アメリカ原産の帰化種 多年草 花期は5〜8月
別名:トキワツユクサ(常盤露草)学名:Tradescantia flumiensis

●ノハカタカラクサ:花は白く、葉に斑(ふ)は入っていない。
●ハカタカラクサ:花はピンク色に近い薄紫。葉に白い斑が入る。
●「ハカタ」と付いているのは、当時人気だった博多織りの柄と、この植物の葉に入った斑の様子が似ているからである。この花が「博多」で発見されたとか、「博多」に生えているというわけではない。

上の写真は「斑入り」の「ツユクサ(在来種)」。雑草の「ツユクサ」にしては珍しいと思っていたが、検索してみると園芸種として販売されているのである。

「ノハカタカラクサ(野博多唐草)」に「野」が付いているのは、園芸種の「ハカタカラクサ(博多唐草)が野生化したから」という理由のようだ。だが、ちょっとおかしな話である。なぜなら「ハカタカラクサ」は「ノハカタカラクサ」を品種改良(?)した園芸種なのである。もともと野生であるものに、わざわざ「野」を付けなくてもいいように思うのだが。まあ、気持ちは分からんでもない。日本には「ノハカタカラクサ」は生えておらず、最初に渡来したのは園芸種の「ハカタカラクサ」の方だった。それが野生化(帰化)したので、思わず「野」を付けてしまったのだろう。

「ノハカタカラクサ(学名:Tradescantia flumiensis)」には「トキワツユクサ」という別名がある。というより両方が使われているので検索がちょっと面倒である。2つの名を別々に記載しているサイトもある。官庁の広報物などは「ノハカタカラクサ」と記載しているので、こっちが本名なのだろう。

斑入りの園芸種の「ハカタカラクサ(学名:Tradescantia zebrina)」の別名は「シマムラサキツユクサ(縞紫露草)」である。「ノハカタカラクサ」と学名が違うのが気になるなあ。

上記の他に「シロフハカタカラクサ(学名:Tradescantia fluminensis 'Viridis')」というのがいる。花は白く(ハカタカラクサは薄紫)、斑が入った園芸種である。この花が野生化したものが「ミドリハカタカラクサ」で「ノハカタツユクサ」によく似ている。違うところは「ミドリハカタカラクサ」は全体が緑色であるのに対して「ノハカタカラクサ」は茎が紫色(褐色)になるところである。

まだまだ話は終わらない。「シラフツユクサ(白斑露草)」というやや大きめの園芸種の露草がある。花が白く、葉に斑が入っている。これが野生化したものが「オオトキワツユクサ(大常盤露草)」で、やはり葉の斑は消えている。

だいたい元が「ツユクサ」なのに「カラクサ」などという抽象的な名前を付けるからややこしくなるのだ。「これがカラクサだ」という植物は存在しておらず、ブドウなどのつる性植物を図案化したものをそう呼ぶのである。風呂敷の「唐草模様」も、その一例である。イメージ頼りの名前を付けるから「ツユクサ」と「カラクサ」の間を行ったり来たりすることになる。「ハカタカラクサ」と聞いても「ツユクサ」は頭に浮かばないだろう。分かりやすくして欲しいものである。

こうしてみると日本に入ってきた「ツユクサ」の園芸種のほとんどは野生化しているようだ。すぐに「先祖返り」をしてしまうのは品種としての性質(斑入り)が遺伝的に弱いのだろう。まあ、そうじゃないと種や苗が売れなくなってしまうからなあ。

写真:zassouneko
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