名古屋の街中でも「キキョウ」は見ることができる。とは言っても「秋の七草」でお馴染みの「キキョウ(桔梗)」ではなく、同じ「キキョウ科」に属する雑草である。昨今では「秋の七草」の「キキョウ」は園芸種でしかお目にかかれないだろう。そして自然の中で自生しているものも数を減らしているという。野に咲く「キキョウ」は貴重な存在なのだ。平安の「秋の七草」の頃より千数百年の時は過ぎた。消えていく植物もあるだろう。とりあえず下に「本家」の「キキョウ」の写真を貼っておく。写真は無料画像サイトからダウンロードしたが在来種の「キキョウ」かどうかは分からない。品種改良されたものかもしれない。
上の写真:「キキョウ(桔梗)」/キキョウ科/キキョウ属
さて、日本の在来種の「キキョウ」に対するのは北アメリカ原産の「キキョウソウ」である(下の写真)。
上の写真:「キキョウソウ(桔梗草)」/キキョウ科/キキョウソウ属/北アメリカ原産 花期は5〜7月
5月頃から咲き始めるが6月を過ぎれば更に大きく成長して一段と目立つようになる。腰ぐらいの高さまで伸びるものもいる。この花は観賞用として輸入されたという記載があったが、そう言われてみれば納得できないこともない。渡来した正確な年は不明であるが、1911年(明治44年)作成の標本があるというから、やって来たのは明治の末期だろう。別名が「ダンダンギキョウ(段々桔梗)」とあるのは、丸い葉が短い間隔で茎にめり込むように「段々」についているからである。上の写真の3枚目が開花前の「キキョウソウ」である。
上の写真:「ヒナキキョウソウ(雛桔梗草)」/キキョウ科/キキョウソウ属/南北アメリカ大陸原産 花期は5〜7月
「キキョウソウ」によく似ている「ヒナキキョウソウ」というのも日本に帰化している。「キキョウソウ」と違うところは、花の色が薄くて花びらが細長いことと、葉が三角形であることだ。別名を「ヒナダンダンギキョウ(雛段々桔梗)」という。外来種の「キキョウ」はどちらも「段々」なのである。
上の写真:「ヒナギキョウ(雛桔梗)」/キキョウ科/ヒナギキョウ属/在来種 花期は4〜9月
外来種の「キキョウ」を迎え撃つのは日本の在来種「ヒナギキョウ(雛桔梗)」だ。だが、写真のように花も小さく、ヒョロヒョロと頼りなさげである。ところがこの花、意外と生命力が強いのである。交通量の多い道路の歩道部分にできた僅かな隙間に咲いているのを見たこともある。また、寒さも気にならないようで、11月の下旬に花を見かけることもある。意外と丈夫なのだ。これからも日本の「キキョウ」を代表して頑張ってもらいたいものである。なんせ本家の「キキョウ」が頼りにならないのだ。
上の写真:「ヒナギキョウ(写真中央)」と「ヒナキキョウソウ(写真右下)」。「キ」と「ギ」の使い分けが面倒である。在来種の「ヒナギキョウ」の「キ」は濁るが、外来種の「ヒナキキョウソウ」は濁点がない。どうでもいいように思うのだが、一応は正式名称なので尊重しなければならない。厄介なのは「ヒナキキョウソウ」の別名「雛段々桔梗」だと「ヒナダンダンギキョウ」と濁るのである。あー、ややこしい。三日経ったら忘れているだろう。
写真:zassouneko