オオバコ(大葉子)/オオバコ科/オオバコ属
在来種 多年草 花期は4〜9月 中国名:車前草 学名:Plantago asiatica
「オオバコ」は古くから知られる植物の一つである。我が国最古の書物といえる「出雲国風土記」の中にも「嶋根(しまね)郡」の産出品のひとつとして「苡(い)=オオバコ」という名前で登場するようである。どのように利用されるのかは確認できなかったが、おそらく薬草だったのではないだろうか。「オオバコ」は現代でも薬草なのだ。
「大葉子」と書くのは大きな葉を持っているからだ。そんなに大きくはないだろうと思うが「体格に比例して」ということだろう。「子」は背の低い小さな植物によく付けられる。「田平子(タビラコ)」なんかもそうだ。どの世界でも「子供」は小さいのである。
中国名で「車前草」と書くのは車が通るような道でも平気で咲いているからだ。車と言っても今のものではなく、馬車や牛車、荷車の類である。想像してみてほしい。うんと昔の話である。人の生活圏を結ぶ道は最初からそこにあったわけではない。歩きやすい場所を人が頻繁に通るから下草が踏まれて枯れ、やがて土がむき出しになり、ようやく明確な形としての道になるのである。また、起伏のある山道ならいざ知らず、平地にあって人の往来が盛んであれば自然と道は広くなる。やがて荷車や馬車も通るようになり、重い車輪が道を固くしていく。そんな場所で普通の植物は生きられないが、「オオバコ」は踏まれても大丈夫なのである。荷車を引きながら道を進んでいると他の植物は見当たらないが「オオバコ」だけは車の前に現れてくるのである。だから「車前草」なのだ。
学名の「Plantago asiatica」の「Plantago」は足跡を意味するラテン語の「Planta」からきているとある。それが転じて「大きな葉」という意味になると、ある書物に書いてあったが、前述したように「(足で)踏まれても丈夫」という意味もあるような気がする。まあ、これはただの素人の勘ぐりである。何の裏付けもない想像であるからご注意を。話を戻そう。小種名の「asiatica」は当然「アジアの」である。学名を直訳すれば「アジアの大きな葉」である。随分と大雑把な命名であるが、この「Plantago」は「オオバコ科」にしか使われず、「Plantago=オオバコ科」なので問題はないのである。
写真:zassouneko