ミゾイチゴツナギ(溝苺繋)/イネ科/イチゴツナギ属
在来種 1〜2年草 花期は5〜6月 草丈は30〜70㎝
さて、判別の難しいイネ科の登場である。最初にお断りしておきますが、名前が合っているかどうかの自信はありません。なぜならば、この植物を「ミゾイチゴツナギ」とした理由が科学的なものではないからです。では何をもって決めたのかというと植物から受けた印象です。それは「見た目が柔らかそうである」という、いささか頼りない理由なのです。他にも「葉が茎に沿うように生える」というのが特徴のようですので、「沿っている」と判断しました。
大きさはこのぐらい。草丈は膝の高さぐらい。
イネ科を代表するコメやムギなどは実が大きくなるにつれ大きくしなる。「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」というやつだ。雑草と呼ばれるイネ科の植物も大抵はそうなる。が、もともと実が小さいので大きく湾曲することは少ない。それどころか中心の茎は真っ直ぐ立ち、そこから横にのばした小穂(というのかは知らんが)もピンと伸びたままという、まるで針金で骨格を作ったかのような姿のものもいる。
そこでこの雑草である。まず全身が濃い緑で柔らかそうである。硬そうな筋は見えない。実際に触ってみても柔らかな感じがする。また、この時期は実が育ってはいないと思われるのだが、早くも全身が湾曲している。ますます柔らかそうである。小さな「スズメノカタビラ」でさえ、すっくと立っているというのに、力を抜きすぎである。いくつかのサイトの写真もそう見える。「イチゴツナギ」の可能性もあるが、その特徴が「表面がザラつく」ということらしく、それが見当たらないので「ミゾイチゴツナギ」とした。
さて、この「ミゾイチゴツナギ」は「ミゾ(溝)=湿気た場所)」に生える「イチゴツナギ」という意味だ。ただ、撮影した場所が湿気ているかどうかは分からない。湿気ていることにしよう。これで「ミゾ」は解決したが「イチゴツナギ」とは何だ。名前の由来を読むと「子供が苺の実をこれに刺したことから(跡見群芳譜/跡見学園女子大のHP)」とある。はい、ちっとも分かりません。
実はこの名前は以前から知っていた。いかにもイネ科らしいバランスのとれた姿とユニークな名前が印象的なのだ。今回、それらしい植物が見つかったので、名前の由来を考えなければいけなくなった。難儀なこっちゃ。
まず、「苺の実を刺す」という行為が遊びなのか実用的なものなのかが分からない。子供は思わぬ遊びを考え出すからだ。遊びでなければ「運搬」ということになる。次に「苺」であるが、これを今流通している果実の姿で考えてはいけない。今の苺は近年になって日本に入ったものである。そうなると「木苺」か「草苺」になるが、子供が食べて嬉しいのは美味しいといわれる「木苺」だろう。ほとんどの「草苺」は不味いはずだ。そうなると「木苺」を繋げるのは「運搬」と「収穫」を意味しており、「草苺」を繋げるのは「遊び」だ。遊びで「木苺」は繋げないだろう。「食べ物で遊んじゃいけません」というやつだ。
イネ科の植物は写真に撮りずらい。細過ぎるのだ。ちなみに下半分に写っている葉は別の植物です。
と、あれこれと考えてはみたが、別にこの植物で刺さなくてもいいんじゃないのと強く思う。それなりの理由があるのだろうか。「木苺」の収穫時期に隣に生えているとか、道具としての優秀さとか。そもそも、この「ミゾイチゴツナギ」は「イチゴツナギ」に似ているので、そう呼ばれるようになったわけだが、「イチゴツナギ」は「ザラついている」ので、それが「苺を繋ぐ」のに何らかの役に立つのかもしれない。けれど「ミゾイチゴツナギ」はそういった性質は持っていない。その意味では名前負けしていることになる。結局のところ詳細は不明のままだ。こういう結果になるんじゃないかと思っていたが案の定である。
写真:zassouneko