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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

マンネングサ/その3/ベンケイソウとマンネングサ

上の写真はおそらく「メキシコマンネングサ(墨西哥万年草)」ベンケイソウ科マンネングサ属。ゴミや枯葉が多いのは、ここが三叉路の突き当たりで吹き溜まりになっているからである。

「マンネングサ(万年草)」の「万年」は「常緑」という意味である。他に「万年青(オモト)」、「万年朗(ローズマリー)」などがある。また同じ意味で「常葉、常盤(いずれもトキワ)」も使われる。「トキワハゼ」「トキワツユクサ」などがそうだ。

「ベンケイソウ(無料画像サイトより)」。海外のサイトなので日本のものとは違うかもしれない。

「ベンケイソウ(弁慶草)」は「丈夫、乾燥に強い、枯れにくい」という。その「強さ」のイメージを「武蔵坊弁慶」の勇猛さと重ねたのだろう。ならば命名されたのは鎌倉時代以降であるが鎌倉幕府にとって弁慶は敵方であるので、その名を口に出すのは憚られる。そうなると次の室町時代からということになるが、まあ普通に考えれば読み物や芝居に「弁慶」のことが取り上げられるようになるのは江戸時代あたりだろうから、その時期の命名だろう。実際に19世紀初頭には「ベンケイソウ」と呼ぶ地域があったようだ。つまり江戸時代でも「ベンケイソウ」はメジャーではないのである。それ以前、10世紀頃は「伊岐久佐(イキクサ)」と呼ばれていたという。「イキクサ」は「生草」だろうか。

20世紀の末から新たな分類法が導入されることになった。DNAの解析を基にしたそれはAGP体系と呼ばれる。その結果、劇的ともいえる変化があった。新しい「科」や「属」が追加されたり、反対に取り消されたりした。こうして今までの分類が変更になる植物がいくつもあり、ベンケイソウ科の植物もそれにあたる。以前は「ベンケイソウ属」があり「マンネングサ」もそこに含まれていたが、新たに「マンネングサ属」として独立した。「ベンケイソウ」は「ムラサキベンケイソウ属」に移行したので「ベンケイソウ属」という分類は無くなった。

ところが所属が変わっても昔からの名前は変えられないのでいろいろ不都合がおきる。例えば「コモチ(コダカラ)ベンケイソウ」などは「カラコニア属」なのに「ベンケイソウ」とつく。昔からある名前だし、同じ「ベンケイソウ科」だからいいじゃないかという意見もあるが、「バラ科サクラ属」の「○○サクラ」を「○○バラ」と呼ぶ者はいないだろう。これは「サクラ」や「バラ」が世間に知れ渡っているからで、それらを混同することは許されないのである。だが有名でない「ベンケイソウ科」の仲間などは扱いが雑になる。まあ、これは「ベンケイソウ」に限った話ではないのだが、あやふやな名前は消費者に混乱を引き起こしていると言える。「そんな大仰な」と思われるだろうが、誤解されるような名前はこちらに誤った情報を与えているのである。かといって、それで大変な被害が発生するわけではない。強いて言えば勝手に誤解した当人が人前で恥をかくぐらいだろう。

上の写真はおそらく「コモチベンケイソウ(カラコニア属)」(正確な名称は不明)。葉の外縁にびっしりと新芽がつく。中央右端から生えているものなどは、すでに親そっくりである。そのまま引き抜いて植えれば成長する。クローンの製造過程が直に見えるという不思議な植物である。違う惑星の植物に思える。「ベンケイソウ科」の植物の多くは、葉を切りとって地面に挿して増やすことができる。生命力が強いというか大雑把というか合理的というか、ちょっと形容しづらい。

上の写真は「エケベリア属」の何かである(種類が多くて特定できない)。おそらく増え過ぎたか飽きてしまったかして、ここに遺棄したのだろう。薔薇の花弁が直接地面から生えているような姿をしており、また世話が簡単なこともあって人気の植物である。品種改良も盛んで、いろいろな形や色がある。これらを「セダム」と呼ぶ場合もあるが「セダム」とは「マンネングサ属」のことをいう。横文字(英語やラテン語など)を使ってもいいが情報は正確なのが望ましい。

「カネノナルキ(金のなる木)/上の写真:無料画像サイトより」という身もふたもない名前の植物も「ベンケイソウ科(クラッスラ属)」である。こちらは「木」なので良い条件下なら3mほどに育つという。そうなれば大金持ちである。

写真は:zassouneko
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