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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

マンネングサの世界/その1/オカタイトゴメ

オカタイトゴメ(丘大唐米)/ベンケイソウ科/マンネングサ属
原産地不明の帰化種 多年草 花期は6〜7月 草丈は4〜8㎝ 学名は、Sedum japonicum subsp. oryzifolium var. pumilum

年も改まった冬の最中である。国道沿いの緑地帯に小さな草が生えている。赤と緑とその中間の色がある。緑の方が大きいようだが種類が違うのだろうか。それとも大きくなれなかったものが赤くなるのか。

植物の葉が赤くなるのは光合成に関係する葉緑体が減ったか無くなってしまったからだろう。いくつかのサイトを見て回ったが、この草が赤くなる理由は分からなかった。紅葉と同じ理由(葉緑体の機能停止、消滅)なら、やがて葉は落ちるだろう。そうやって新しい葉を準備しているのだ。新陳代謝である。ただ単に枯れただけかもしれないが。

同じ仲間に「タイトゴメ」と「オカタイトゴメ」という種がある。「オカ(丘)」がついていない「タイトゴメ」は海の近く、沿岸部に自生する在来種である。「オカタイトゴメ」に「オカ(丘)」とついているのは内陸部に生えているからで、「タイトゴメ」に似ているが違う種である。ところが、この「オカタイトゴメ」は海岸近くに咲くこともあるようなのでややこしい。「タイトゴメは内陸には生えない」と言った方がいいかもしれない。

「タイトゴメ」は「大唐米」と書くが聞いたことのない米の名である。おそらく「ダイトウゴメ」が訛ったのだろう。高知県の方言だという説もあるようだ。この米の正体は南京米、最近ではタイ米などと呼ぶインディカ米のことだ。インドカレーの店で出されるような長い粒の米である。この植物の葉がインディカ米の形に似ているから、そう命名されたのだ。

大きさはこのぐらい。

「タイトゴメ」と「オカタイトゴメ」を見分けるには葉の断面で判断するようである。「タイトゴメ」は切り口の形が丸いが「オカタイトゴメ」は半月形になる。また「タイトゴメ」の草丈の方がやや大きい(5〜12㎝)という。まあ個体差があるので、それだけで判断するのは難しいかなあ。この「オカタイトゴメ」も園芸種として品種改良されたりしているので、この写真の植物も元は園芸種かもしれない。

葉は互生。対生(向かいあってつく)ではなく、茎に交互につく。


「メノマンネングサ(雌之万年草)」(またはその1品種である「モリムラマンネングサ」)にもよく似ている。だが上に書いたように草丈が違うようだ。比較すると「オカタイトゴメ<タイトゴメ<メノマンネングサ」の順に大きくなる。また「コゴメマンネングサ/小米万年草(別名:タイワンタイトゴメ/台湾大唐米)」という紛らわしい種もあるが、こちらは九州南部から沖縄にかけて自生しているので、ここで紹介している植物とは関係ないだろう。

「オカタイトゴメ」の学名が資料によって微妙に違うのが気になるが、それはそれとして学名の簡単な説明を。「Sedum(座るという意味。マンネングサの仲間が岩場などに貼り付くように生えるから) japonicum(日本の)subsp(含む。補足の意味だと思うがよく分からん). oryzifolium(イネのような葉という意味らしいが?である。米粒に似ているというのなら分かるが) var. pumilum(背の低い)」。まあ、知らなくても構わない情報だな。

他の学名には「Siebold」と入っているので、あの長崎の出島のお滝さんの「シーボルト」が学名をつけたか、日本から持ち帰ったのだろう。つまりシーボルトのいた1823〜28年頃には、すでに「オカタイトゴメ」は日本に定着していたのである。もともと原産地が不明の植物なのだが、ドイツ周辺(シーボルトはオランダ人ではなくドイツ人。オランダ人と偽って日本に入国した)のヨーロッパには生息していなかったようだ。そうなると原産地はそこを除いた地域のどこかであるが、残りの範囲が広すぎるのが難点である。これはちょっと不思議なことなのだが、今の時代になっても原産地すら分からない植物が日本に自生しているのである。この事態をどう評価したものか。自然の奥深さや多様性に素直に驚嘆すべきなのか、それとも解明もできない専門家の努力不足を非難するのか。どちらにせよ実物は今ここに生えているのである。面白いとしか言いようがない。

写真:zassouneko
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