セイヨウカラシナ(西洋芥子菜)/アブラナ科/アブラナ属
外来種 1年草 花期は4〜5月 草丈は50〜120㎝ 学名:Brassica juncea(L.)Czern. 別名:セイヨウカラシナ 中国名:芥菜 英名: indian mustard、brown mustard
葉を囓ってみたので自信を持って言える。これは「セイヨウカラシナ」である。青臭い味だが食べられないほどでもなく、しかもカラシの味がする。それにしてもずいぶんと季節外れの花だな。どうするんだ、もうすぐ冬が来るぞ。
名前の由来は、この雑草の種が「カラシ」になるからだ。ヒネリもなにもない極めてシンプルな命名である。それなのにちょっとおかしなことになっている。
「セイヨウカラシナ」。冒頭の写真のものよりはるかに大きく倍以上はある。普通の野菜に見える。
こちらも「セイヨウカラシナ」。今回初めて気がついたが19号線沿いにたくさん生えている。花期は春のはずだが秋にも咲くようだ。
①「セイヨウカラシナ」が日本に帰化した時期はハッキリとしない。明治時代だとか第二次大戦後とか色々な説がある。その中で面白いのはWikipediaの記載である。以下に記す(一部略)。「セイヨウカラシナは、カラシナの原種である野生種が、明治期以降に帰化植物となった」とある。つまり「野生種」が「明治期以降」に帰化したわけであるが、その「野生種」がいつ頃日本にやってきたのかが分からない。帰化できるような能力を持つのなら、日本に馴染むのにさほど時間はかからないだろう。ならば日本にやってきたのは遅くても江戸末期頃ではないか。
②日本には古くから「カラシナ」は生えている。弥生時代に渡来したという説もある。10世紀頃の書物「本草和名/深江輔仁(918年)」にも「芥(漢名)」は「和名では加良之(からし)」とある。1000年以上前から「カラシナ」は生えているのであるから帰化しているのである。と、いうよりは在来種と言っていいのではないか。
③つまり「カラシナ」と「セイヨウカラシナ」の2種類がある。ところが学名は両者とも「Brassica juncea」なのである。「カラシナ」「セイヨウカラシナ」とあれば在来種と外来種ではないかと普通は思うが両者は同じ植物なのだ。多くのサイトが片方の名前しか載せていないのはそのせいだろう。だったら、どちらかの名前に統一して、もう片方は別名として扱えばいい。このままでは2種類の「カラシナ」があると勘違いしてしまう。
「セイヨウカラシナ」が帰化しているのはいいとして、在来種の「カラシナ」はどうしちゃったのだろうか。これは素人考えだが、昔からある「カラシナ」は栽培種としての歴史が長過ぎたせいで野生に戻れなくなってしまったのではないだろうか。「セイヨウカラシナ」は同じ「アブラナ科」の「アブラナ」との間で簡単に交雑するという。ならば「カラシナ」も「アブラナ」と交雑する可能性があるから、辛くない種ができるようになるかもしれない。そうなってしまったら「カラシナ」の意味がなくなってしまう。「カラシナ」栽培の歴史は1000年以上はあるわけだから、それなりの品種改良はされているだろう。その結果、帰化の能力を失ってしまったのではないだろうか。①のWikipediaに「カラシナの原種である野生種」と書いてあるのは、日本のものが栽培種であることを意味しているのだろう。今、野外で見られる「カラシナ」のほとんどは「セイヨウカラシナ」であるという。
不思議なのは、はるか昔に渡来した「カラシナ」は野生種だったはずなのに、なぜか日本に帰化できなかったことだ。後年やって来た「セイヨウカラシナ」は帰化しているのに。
最後にちょっと気になることが。「セイヨウカラシナ」の原産地は東アジアや西アジア、中央アジアなどとサイトによってマチマチである。どの地域も日本から見れば一応は西の方角だが「セイヨウ」のイメージではないな。
写真:zassouneko