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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

キツネノマゴ/「狐」と「孫」の関係とは?

キツネノマゴ(狐の孫)/キツネノマゴ科/キツネノマゴ属
在来種 アジア各地に分布する 1年草 花期は8〜10月 草丈は10〜40㎝ 学名はJusticia procumbens

面白い名前の植物である。さぞや面白い話や逸話があるのではと大いに期待したのであるが、名前の意味は不明だそうだ。この草は本州の道端で普通に見られる(この辺りではここでしか見かけないが)植物のようだが、それが「キツネ」と、どう結びつくのか。いくら田舎でも道端にキツネがそうそういるわけがない。犬でも猫でもカラスでもスズメでもなく、なぜ「キツネ」なのだろうか。この植物の頭頂部にある穂を「キツネ」の尻尾に見立てたという説がある。また「マゴ」は「ママコ=継子」が訛って「マゴ=孫」になったという説があるが、なぜ「ママコ」なのかが分からないという。まあ「マゴ」でも「ママコ」でも意味が分からないのであるが。

学名の「Justicia procumbens」の「Justicia」は人名で「procumbens」は「伏臥した,這った,倒伏形の」という意味なので和名とは関係ない。また「キツネノマゴ」は漢名だと「爵床」となるが、検索すると中国語の「キツネノマゴ」の解説しか表示されない。この漢字に他の意味はなさそうである。


「狗尾草/エノコログサ=ねこじゃらし」「トラの尾」「ネズミの尾」など、植物の穂の部分は動物の尻尾によく例えられる。だが、それらは実際の動物の尾と見間違えるほど似ているわけではない。「エノコログサ=コロコロとした子犬の尻尾」「トラの尾=大きい」「ネズミの尾=細くて長い」のような象徴的な意味合いが強い。ならば、そこに特徴的な尾を持つ「キツネ」があったとしても不自然ではないし、それがこの草であっても問題はない。不自然なのは名前が「キツネの尾」にならなかったことだ。キツネの尾は長く太くフサフサとしているが、この草では少し物足りない気がする。

素直に「キツネノオ」と名付けていたら納得しそうだ。

「子供は親のイコン(アイコン)である」というのは昔読んだ記号論の入門書にあった言葉である。一般に「子」は親の小さなコピーといえるだろう。親とよく似ているのだが、いかんせん小さい。キツネの立派な尻尾は、あの「サイズ感」があってのものだが子供だとやや劣る。「孫」になるともっと小さいだろう。それが血の繋がりがない「ママコ」ともなると、ほとんで似てはいないだろう。つまり「キツネの尻尾にはあまり似ていませんよ、けれど雰囲気はあります」という意味の名前なのではないか。得意げに書いているが、ただのオッサンの意見であるので真に受けないように。

「キツネノマゴを正しい名とする」という条件付きだが、この名前はどことなくユーモアを感じさせる。江戸時代に入ってからの命名ではないだろうか(いつもの勘である。ただの思い込みともいう)。意味がはっきりしていないのが難点であるが、そこに江戸時代に花開いた庶民文化の影響があるような気がする(またもや勘である)。俳句や川柳、頓知や洒落のような言葉遊びに影響されているのではないか。と、素人は考える。けれど調べない。素人は気楽である。ところで、こんな素性の分からない名前をそのまま科名や属名にするのはおかしいのではと思われるかもしれない。実は日本には「キツネノマゴ科キツネノマゴ属」の植物はこれしかいないのである。そりゃあ「キツネノマゴ」を使うしかないわな。歴史ある名前は変えられないのだから。

追記&訂正(2016.10.21):文章を一部追記・訂正しました。
(2016.10.23):同上

写真:zassouneko
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