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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

カラムシ/その1/縄文時代の衣服

カラムシ/イラクサ科/カラムシ属
在来種 多年草 花期は8〜9月 草丈は100〜200㎝ 漢語:苧麻(チョマ)英語:China grass, Ramie

この草は古来より人との関わりが深いため情報はたくさんある。「魏志倭人伝(三国志の一部、3世紀後半)」に当時の日本では「カラムシ」を栽培して衣服を作っていたと記載がある。伝聞ではなく実際に来日して見聞したことなので信頼性は高い。もっとも「魏志倭人伝」に「カラムシ」と書いてあるわけではなく、そこは「紵麻(ちょま)」である。また、紀元前3世紀頃の遺跡から「カラムシ」で織った布が発見されたという。これだけでも「カラムシ」の歴史は5〜600年あるが、まだまだ続くのである。そろそろ頭がパンクしそうなのでこの辺で切り上げる。現在では「苧」は「チョ」「お」「からむし」と読み、意味は植物の「カラムシ」、または「カラムシ」や「麻」から作った糸(繊維)を指す。「芋(イモ)」ではないのでご注意を。

注意しなければならないのは「言葉」だ。奈良時代、平安時代のように「定義された文化」の中での「言葉」は統一されており、また漢字も入ってきたし書物も残っているので現代との連続性も見出せる。だが、はるか昔の時代は闇の中である。縄文時代でも言葉はあったろうが記録は残っていない。話し言葉の「音」は残らないのだ。この「カラムシ」もいにしえの時代を引きずっているようだ。弥生時代も「カラムシ」と呼ばれていたのかも不明である。「カラムシ」という言葉を安易に現代の言葉と対比させることは間違いである。言葉の罠にかかってはならない。

一説に「カラムシ」は「茎蒸」と書き、名前の由来は「茎を蒸して繊維をとった」ことからだという。「茎」は「カラ」とは読まないが、これは「幹=殻」のことだという。「殻」は中に対しての外の部分を指し、多くの場合はいらない部分になるが、外=外皮だけを利用する植物も多い。「茎」「幹」にも「中と外」がある。どちらを利用するかは人の都合による。このように植物のある部分を「中、外」に分けた場合、外の部分が「カラ」になるのだ。また「茎を蒸して」とあるが「カラムシ」は水に浸けるだけで皮は剥けるそうである。現在でもそうしているそうだ。そうなると「蒸す」は怪しい。和紙の原料である「コウゾ」「ミツマタ」は蒸すそうだ。「カラムシ」の長い歴史に敬意を表して本稿では漢字表記はしない。と、言うよりもそもそも漢字で表す必要がないのである。漢字で書きたい人は漢語の「苧麻」でいいと思う。

古来より「カラムシ」は麻とならんで繊維として利用されてきた。両者とも起源は古く、六千年前からとも云われている。縄文時代の中期である。苧麻(カラムシ=ラミー)、麻(大麻)、亜麻(リネン)、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、洋麻(ケナフ)と、みんな麻が付いているが「アサ科」なのは「麻=大麻」だけで、しかも他のものは全部科が違うのである。繊維として利用できる植物はみんな「麻」としたのだ。ところでこうやって得られた繊維でどんな衣類を作ったのだろうか。「魏志倭人伝」によると袋状のものの上部に頭と腕を通す穴を開けた、貫頭衣と呼ばれるものを着用していたらしい。ノースリーブのロングTシャツといったところか。女子の寝間着だな。

この草は在来種だが、古来の姿そのままかというと疑問があるという。そう考える理由があるのだ。普通に考えると効率的に繊維を採るためには一ヶ所で栽培するのがベストであるから畑が作られる。ここで野生種と栽培種との区別がなされるようになる。やがて中国産の「ナンバンカラムシ(マオ、マオラミー)」が入ってくると、それが在来種と交配することもある。さらっと書いたが、この間に時間は数百年流れているのである。また、近年では幕末から明治にかけても輸入されている。写真でも分かるだろうが、どの葉を見てもボロボロである。この葉を専門に食べる虫が3種あるという。そのうちに1つが明治に頃にやって来た「ラミーカミキリ」である。新たな敵が海を越えてやって来たのだ。「カラムシ」にとってはいい迷惑である。

葉の裏は白っぽい。

栽培していたものが野生化することもあるし、他の品種と交配することもある。現在、野原で見られるものは、昔の栽培種が野生化したものだというのが定説だ。葉の裏が白っぽいのが「カラムシ」で、これが白い綿毛がなく緑色なら「アオカラムシ」になる。「ナンバンカラムシ」は全体に大きく葉が幅広で丸い印象だ。さて、この写真の植物はというと微妙である。葉を比べると「カラムシ」と「ナンバンカラムシ」の中間のような感じだ。まあ「カラムシ」の仲間かな。

※「カラムシ」の名前に関しては和泉晃一氏 のHPの「草木名の話」を参考にしました。お礼申し上げます。もっとも半分も理解できておりませんし、誤った解釈をしているのではないかと不安に思っております。

写真:zassouneko
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