●シャクチリソバ(赤地利蕎麦)またはシュッコンソバ(宿根蕎麦)/タデ科/ソバ属
ヒマラヤ周辺原産 多年草 昭和の初期に小石川植物園に薬用として導入、やがて逸出する。1960年頃に帰化を確認 花期は7〜10月 草丈は30〜100㎝
●ダッタンソバ(韃靼蕎麦)/タデ科/ソバ属
詳細は不明。「和漢三才図会(寺島良安/1712年)」に載っているので江戸時代にはあったようだ。 このどちらとも判別し難いので両方載せました。まあ、本当の「ソバ」じゃないと思いますので。
「シャクチリソバ」の「赤地利」は漢名からということだが、本当の漢名は「金蕎麥(キンキョウバク)」というらしい。「赤地利」というのはタデ科/イヌタデ属の「ツルソバ」を指すという。「ダッタンソバ」の「韃靼」は明の時代におけるモンゴル系遊牧部族のことで、「タルタルステーキ」でお馴染みの「タタール」のことである。中国の内陸の北の方、寒いところから来た「ソバ」ということだと思う。最近になって、北海道、東北、北陸などで特産品にしようと栽培が始まっている。
この両者ともポリフェノールの一種である「ルチン」を多く含んでいる。抗酸化作用があり、いわゆる「血液サラサラ」という怪しいキャッチフレーズにのって注目されている物質だ。普段食べている「ソバ」にも「ルチン」は含まれるのだが、それの100倍はあるという。これでは人は飛びつかざるを得ない。ところが思わぬ弱点があって、「ルチン」と水が出会うと強烈な苦さになってしまうのである。これでは「ソバ」を作っても食べてはもらえない。だから「そば茶」として売られていることがほとんどである。お茶は苦くても飲み慣れているので問題はないのだ。
「ソバ」の大雑把な分け方に「甘ソバ」「苦ソバ」というのがある。普通の「ソバ」は「甘ソバ」で、「シャクチリ」と「ダッタン」は当然「苦ソバ」である。冒頭に「和漢三才図会」に載っていると書いたが、それによると「ダッタンソバ」は飢饉の際の「救荒植物」の一つとして紹介されているようだ。食べようと思えば食べられるのだ。腹が空けば何でもおいしいというではないか。
写真:zassouneko