ヤブジラミ(藪虱)/セリ科/ヤブジラミ属
在来種 越年草 花期は5〜7月 草丈は30〜80㎝
撮影したのは2016年の6月上旬である。歩道の植え込みに何本か生えていた。よく似た植物に「オヤブジラミ(雄藪虱)」があるが、花期が4〜5月となっているので「ヤブジラミ」とした。
名前の由来は、この雑草がいわゆる「くっつき虫(ひっつき虫)」の一つであるからだ。「オナモミ」によく似た5㎜ほどの実をつける。「オナモミ」が分からなければ、ラグビーボールのような形と言えばいいだろうか。「オナモミ」の実は大きいので「虫がくっついた」だが、「ヤブジラミ」はとても小さいので「シラミがくっついた」になったのだ。
私は歳をとってはいるが「虱」を見た記憶がない。「虱」というと第二次大戦後の日本を記録したフィルムで見た、「頭にDDTをかけられる人」という映像のイメージしかない。それか芭蕉の「奥の細道」の「尿前の関」で詠んだ「蚤虱馬の尿(ばり)する枕もと」の句だ。だから実際の「虱」は見たことがない。ところが最近になって、小さな子供のいる世帯で「虱(アタマジラミ)」の被害がちらほら出ているという。私の世代でさえ「虱」のことを知らないのだから、若い世代は尚更だろう。幸い(?)なことに、薬局で「虱」によく効くシャンプーなどが売っているようなので駆除は家庭でもできるようだ。
なぜか色が薄い「ヤブジラミ」。
この「藪」は「薮」とも書く。どっちでもいいらしい。どのみち公式の文章には使わないようである。「草木が生い茂った所」というような意味なので、「草木が数多くある」から「数」の上に草かんむりがあるのだ。「藪」の草かんむりを取ったものを、簡略化すると「数」になる。昔の中国でそう書くようになったらしい。ただ、中国には「薮」の字はなく、これは和製の漢字だそうだ。
この雑草を最初に見つけた時、なぜか普通の雑草とは違うような印象を受けた。野菜か薬草のような気がしたのだが、調べてみると食用でも漢方薬でもないようだ。まあ「下手の考え休むに似たり」の言葉通り、結局は普通の草だったわけである。なんで薬草だと思ったんだろうか。
写真:zassouneko