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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

コアカザ/どう見てもブロッコリー

コアカザ(小藜)/ヒユ科/アカザ属
在来種(ユーラシア原産だが古い時代に日本にやって来た史前帰化植物) 1年草 花期は6〜8月

まずは本来の「アカザ(藜)」の説明から。源順(みなもとのしたごう)の「倭名類聚抄(934年)」に「藜(漢名)」は「和名阿加佐」とある。「藜」を強引に「アカザ(サ)」と呼ぶことにしたのだ。この「 藜」という漢字は、植物の「アカザ」にしか使われない。植物はこういった例が多い。魚もそうである。寿司屋の湯呑み茶碗を見れば納得いただけるだろう。その中には一生使わないし目にもしない漢字もあるのだ。漢和辞典が厚くなるわけである。

この「アカザ」の仲間に「シロザ」というのもあるから「 阿加佐」の「 阿加」は「赤」の意味だろう。「佐」には「助ける」の意味が現在ではあるようだが、その当時に「さ」が何を意味していたのかは分からない。この「アカザ」は草のくせして幹が硬く丈夫なので「杖(つえ)」として利用されるという。高級品だそうだ。 

さて「ヒユ科」には以下のものがある。
左から「ケイトウ」、「ホソアオゲイトウ」、「ヒナタイノコヅチ」である。同じ科だけに似ているっちゃ似ている。そのものずばりの「ヒユ(莧)」という植物もおり、「ヒユナ莧菜)」という名前で古来より食用として利用されてきた。同じ「ヒユ科」には「ホウレンソウ」がいるが、「シュウ酸」が多く含まれているせいか、食べた後に歯の表面が変な感じになる。「ホウレンソウ」でさえ食べ過ぎを注意されるほどなのに、同じくシュウ酸が含まれている「ヒユ」はそれ以上の注意が必要だろう。もし「ヒユ」を食べようとするのなら必ず茹でることと食べ過ぎないようにするのがコツである。この「コアカザ」の漢名は「小藜」だが、別名を「 灰莧菜」という。「菜」がついているので食べられるのかもしれない。

今から70年ほど昔、第二次大戦後の混乱の中で食料不足に対処するために「ヒユ」を利用するよう呼びかけがあったという(「夏の七草」と呼び、食べられる雑草を列挙した)。改めてアナウンスが必要な状態だったということは、「ヒユ」が利用されなくなってからすでに長い時間が経っており、食用であるという認識が消えてしまったのだろう。東南アジアや中国では「ヒユ」は今でも食べられているようだが。また、「イノコヅチ」は薬草の「牛膝(ごしつ)」として有名だ。この「コアカザ」も虫刺されや歯痛に効果があるという。 

最初に見つけた時の感想は「小さなブロッコリーにしか見えない」だ。正体が不明なので「ブロッコリーに似た植物」で検索したりしたが、結果は空振りである。残念。おかげで「ヒユ科」に辿り着くまでずいぶんと時間がかかってしまった。でもブロッコリーだよなあ。ひょっとすると茹でたら食えるんじゃね。ああ、でもシュウ酸が‥。

追記&訂正(2016.9.17):文章を一部追加訂正
写真:zassouneko
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