忍者ブログ

雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「かづら」「かずら」「つづら」「つずら」/つる性植物/その2

「ヘクソカズラ」(2016.8.20撮影)

以下は文部科学省が出した現代仮名遣いに関する内閣告示の抜粋である。「ぢ」「づ」を対象にしているが、「かずら」「つづら」の「zu」「ju」の部分が知りたいので「づ」に関してのものだけを抜き出し、「ぢ」は省いた。なお「❶、❷、❸」の丸数字は筆者が入れた。

❶次のような語は,「づ」を用いて書く。
(1)同音の連呼によって生じた「づ」
例:つづみ(鼓) つづら つづく(続) つづめる(約△) つづる(綴*)
〔注意〕「いちじく」「いちじるしい」は、この例にあたらない。
(2)二語の連合によって生じた「づ」
例:みかづき(三日月) たけづつ(竹筒) たづな(手綱) ともづな にいづま(新妻) けづめ ひづめ ひげづら おこづかい(小遣) あいそづかし わしづかみ こころづくし(心尽) てづくり(手作) こづつみ(小包) ことづて はこづめ(箱詰) はたらきづめ みちづれ(道連) かたづく こづく(小突) どくづく もとづく うらづける ゆきづまる ねばりづよい つねづね(常々) つくづく つれづれ
❷なお,次のような語については,現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として,それぞれ「ず」を用いて書くことを本則とし,「いなづま」のように「づ」を用いて書くこともできるものとする。
例:いなずま(稲妻) かたず(固唾*) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく うでずく くろずくめ ひとりずつ ゆうずう(融通)
❸〔注意〕 次のような語の中の「ず」は,漢字の音読みでもともと濁っているものであって,上記(1),(2)のいずれにもあたらず,「ず」を用いて書く。
例:ずが(図画) りゃくず(略図)

こういった退屈な解説は敬遠したいのだが、仕方がないので読む。❶の(1)に「つづら」とある。「同音の連呼によって生じ」とあるから、元は「つら」だったわけだ。それならば「」が「」に変わるわけがないので、「ツズラ」は存在しないことになる。一つ解決したと思ったのだが、この「つづら」は「葛籠(カゴ)」のことなのか「葛(つる性植物)」を指しているのかが不明である。どちらも「つづら」だというのなら、「つづみ(鼓)」は漢字にしてあるのだから「つづら」も漢字にしてほしかった。

さて次は「かずら」「かづら」である。世間では「かずら」が正解だといわれているが‥。
古今集に「み山には あられ降るらし と山なる まさきのかづら 色づきにけり」とある。この「まさきのかづら(正木の葛)」は「定家葛(キョウチクトウ科テイカカズラ属)」だといわれている。また萬葉集には「さうけふに はひおほとれる くそかづら たゆることなく みやつかへせむ」の歌がある。「くそかづら(屁糞葛)」は「アカネ科ヘクソカズラ属」の植物である。この「かづら」はつる性植物の総称で昔は「迦都良」「加豆良」と書いていたようだ。つまり昔は「かづら」だったが、それが「かずら」になったのは❷の法則によるものだろう。けれど「づ」を使用しても構わんよと書いてあるので、「かづら」でもいいと思うのだが、世間は「かずら」を採用している。四国の山中にある「つる性植物」で作られたことで有名な吊り橋は「かずら橋」である。公式HPも「かずら」であり、漢字ではない。なぜなのだろうか。これを「新妻」と「稲妻」で考えてみる。「新妻」は「最近結婚した女性」で、それを「新」と「妻」を分けても、それぞれの文字は「最近結婚した女性」の意味の一部を受け持っている。だが「稲妻」は「雷」だが、それを「稲」と「妻」に分けてしまうと「雷」の意味が消えてしまうのだ。

こうした「 二語に分解しにくいもの」は「いなずま」と書いてもよいのである。それまでにない新しい単語が作られたのであるから、「づ→ず」という不自然とも思える変換も許されるのである。では「かずら」はどうか。「づ」が「ず」に変化するには「かづら」が「か+づら」でなければならない。「迦都良」「加豆良」は「迦+都良」「加+豆良」なのだろうか。実は「づら」と呼ぶ例を一つだけ見つけた。枕草子の「あてなるもの」の段に「削り氷(けずりひ)にあまづら入れて、新しき金鋺(かなまり)に〜」とある。この「あまづら」は「甘葛」である。「あま」+「づら」ならば「か」+「づら」もあるだろう。まさか「あまかづら」が訛って「あまづら」になったのではないだろうな。話が元に戻るじゃないか。しょうがない、それは潔く無視しよう。つまり「か+づら」という言葉があり、 これは「二語に分解しにくい」「新しい単語」という分類で「かずら=カズラ」としているのだろう。そして「か+づら」に該当する漢字はないのだ。二つを合わせて作った漢字が「葛」「蔓」「鬘」である。それ以外に解釈のしようがない。しかし、うーん、納得がいかんな。オレは「かづら」を支持したい。

いいんかな、こんな結論で。
PR