メリケンガヤツリ(米利堅蚊帳吊)/カヤツリグサ科/カヤツリグサ属
南北(熱帯)アメリカ原産の帰化植物 多年草 花期は7〜9月 草丈は30〜100㎝ 要注意外来生物
「American」は発音する際に「me」の部分にアクセントがくるので、「アメリカン」が「ァ、メーリカン」になり、やがて「メリケン」になったというのはよく知られた話だろう。明治に入って外国との交易が盛んになった頃にできた言葉のようだ。名前通りの「アメリカのカヤツリグサ」である。
第二次大戦後にまず沖縄に侵入したようだ。本土で最初に帰化を確認したのは三重県の四日市で1959年のことである。1980年代には神奈川でも発見され、現在では関東以西の全域で繁殖が確認されている。特に兵庫県の西宮市武庫川の河川敷では大群落を形成するほどの勢いで繁茂しており、在来種に著しい影響を与えているようだ。繁殖力が旺盛で要注意外来生物に指定されている。
ほとんどのサイトの説明では湿った場所や水辺近くを好むとあるが、写真の「メリケンガヤツリ」はアスファルトの隙間から生えている。街中では場所の選り好みをしている場合ではないのだろう。種の判別が難しい「カヤツリグサ科」にあって、「メリケンガヤツリ」は比較的見分け易い部類に入る。特徴は全体的に大きいことと、緑が濃いことだ。大きいものは1m前後にもなるというが、写真の草は50㎝ほどである。それでも、この辺りで見かける他のカヤツリグサと比べても、かなり大きくて丈夫そうである。
雑草に関係のない話だが、以前から「メリケン粉」と呼ぶのが不思議だった。小麦粉は昔から日本にもあるし、江戸時代には「うどん」もあったではないか。「カヤツリグサ」のついでに調べてみると、どうやら「パン」と関係があるようだ。パンは織田信長の時代にポルトガルを通して日本に入ってはいるが普及はしなかった。理由はいろいろある。①製造に必要なイースト菌が日本にない。②キリスト教の洗礼にもパンは使われるので、それとの関連で避けられた。パン食はキリスト教を信仰していると思われるからである。③米食中心の日本人の口に合わない。和食のおかずはパンには合わないのだ。④日本の小麦粉がパン作りには向いていない。
このうち④が「メリケン粉」と呼ばれるようになった理由である。日本の小麦粉は水車を利用して粉を挽いており、「うどん」は作れるが「パン」には向いていないらしい。アメリカの機械挽きの小麦粉の粒子の白さと細かさが際立っていたので、その小麦粉を「メリケン粉」と呼ぶようになったのだ。ついでに、日本でパン食が広まりきっかけは、1874年(明治7年)に発売された「木村屋」のアンパンであるというのは有名な話だ。イースト菌の代わりに日本酒の醸造に使う酵母を用い、パンの中に和菓子で使う「あんこ」を入れたのだ。これが好評を博し、やがて全国に広がっていった。日本のパン食は和洋折衷の「菓子パン」から始まったのだ。
写真:zassouneko