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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

オオキンケイギク/その3/「キンケイギク」の名前の由来を考えてみた

上の写真は「オオキンケイギク(大金鶏菊)/キク科/ハルシャギク属」北アメリカ原産の帰化種 特定外来生物 多年草 花期は5〜7月。「キンケイギク」自体は明治の頃に渡来しましたが、帰化できなかったようです。園芸種としても忘れられた存在になっているようです。

「オオキンケイギク」の原稿に対してコメントがあり、貴重なサジェスチョンと共に今まで知らなかった資料も教えていただいた。とてもありがたい。感謝いたします。教えていただいたものの中に「キンケイギク」の英語名「goldenmane tickseed」があったので、これについて考えてみたい。まず「golden」は「黄金の、金色の」で、「mane」は「たてがみ、ふさふさの髪」の意味である。「 tick」は最初に「カチカチという音」という訳が出る。時計の「チックタック」の「チック」であるが、ここでは害虫の「大型のダニ」とするのが正しいらしい。「seed」は「種」だ。つまり「金色のたてがみのある、ダニのような形の種を持つ花」である。おそらく花びらの様子を「金色のたてがみ」としたのだろうが、どうもピンとこない。「金色」にも「たてがみ」にも見えないし、このような形と色の花は他にいくらでもあるような気がするのだ。花を正面から見ると、その外縁がギザギザとしているので(冒頭の写真参照)、まあ「たてがみ」と言えなくもないか。でも色は「ゴールド」じゃないよね。教えていただいたブログにあったURLが無効になってしまっていたので、「金色のたてがみ」の写真が見れないのが残念である。そして「ダニのような形の種」は下の写真を参考にしたい。これは「オオキンケイギク」の種であるが、「キンケイギク」と似たようなものだろう。少々乱暴な言い草であるが。「キンケイギク」の学名「Coreopsis basalis」の「Coreopsis」は「南京虫(トコジラミ)によく似た」という意味であるが、面倒くさいことに「ダニ」と「南京虫」は全然違うのである。「ダニ」は「クモ綱ダニ目」だが、「南京虫」は「昆虫綱半翅目」でカメムシの仲間の吸血性の昆虫なのである。
「オオキンケイギク」の種。写真中央の少し下に、ひときわ大きな2つの種(長さは5㎜ほど)がある。この大きさだと「ダニ」というよりは「南京虫(トコジラミ)」といった方がいい気がする。実際の「ダニ」や「南京虫」を見たことはありませんけど。

「銀毛(ぎんけ)」という言葉がある。動物などの毛の色を指し、ようは銀色の毛(体の色)を持つものをいう。「銀毛の鮭」や「銀狐」とか、背中の毛が白くなったゴリラは「シルバーバック」と呼ばれる。これを調べていて気付いたのだが、日本には「金毛」で表される動物がいないのではないか。今「金毛」でGoogle検索をすると、最初に「ゴールデン・レトリバー」が表示される。これは参考にならない。他に出てくるのは「金毛九尾の狐」である。これは妖怪の仲間であって、民俗学や文化人類学が取り扱う分野だろう。後は中国の「百度」の中国語のページしか表示されない。そのページに飛んで翻訳をかけても、大した情報は得られまい。中国には「金毛」で表わされる何かがいることが確認できただけでいい。この結果からみて、古来の日本には「金毛」で表現される動植物はいなかったのではないかと、思わざるを得ない。それだからこそ、存在するはずのないモノとしての「金毛九尾の狐」の「金毛」が、その「妖狐」の存在を際立たせているのではないだろうか。
これまで英語名が和名に与える影響というのは、ほとんど考慮しなかった。英語名や和名は学名と違い、いわば「俗な言葉」であって、その国の歴史や神話や文化、風俗や習慣などが反映されている。「蚊帳」を知らない国の人に「カヤツリグサ(蚊帳吊草)」を説明するのは難しい。これは逆の場合(外国のものを日本に紹介する場合)も同様だろう。こうした場合、日本の実情に合わせた名前がつけられるだろう。「キンケイギク」の英語名「goldenmane tickseed」は「金色のたてがみ」から始まるが、前述したように「金色のたてがみ」を持つ動物は日本にいないのである。これは「いない」というよりも、黄色やオレンジ色を「金」と表現する習慣が無かったというのが正しい言い方なのかもしれない。海外では「ゴールデン・レトリバーの毛並み」や「キンケイギク」は「金」なのである。こうした事情があったから、「キンケイギク」は「金」とついている外国産の「金鶏」から名前をもらったのではないか。まさか「九尾の狐」をもってくるわけにもいくまい。格が違いすぎるだろう。また「たてがみ」の部分は無視である。それに「tickseed」=「ダニに似た形の種」も当然無視される。観賞用の花にそんな名前は似つかわしくないからである。

「キンケイギク」が日本に渡来したのは明治12年(1879年)であるが、「南京虫」も外来種であって、渡来したのは江戸の末期だという。その前年、1878年に日本にやって来たイギリスの女性旅行家(旅行家という肩書きが当時を偲ばせる)イザベラ・バードが各地で「南京虫」に悩まされたと記載しているので、その頃には日本国中に広がっていたようだ。50年ほど前に効果のある薬剤が開発されたので「南京虫」は激減したが、今もどこかにいるのである。現代の日本でも、宿泊施設で「南京虫」の被害にあった人が翌日の業務を正常に遂行できなかったとして損害賠償を請求して勝訴した事例がある。2014年頃の話だそうだ。また最近になって、アメリカの大都市のホテルなどに、今までの薬剤が効かない「スーパートコジラミ」が出現して大変な騒ぎになっているそうである。生物の進化は止まらないのである。それが人類にとって不都合な結果をもたらすことであっても。

写真:zassouneko
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