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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

トキワツユクサ/さまよえるツユクサと私

①トキワツユクサ(常盤露草)/ツユクサ科/ムラサキツユクサ属
南アメリカ(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ)原産の帰化種 常緑の多年草 要注意外来生物 学名:Tradescantia fluminensis 英語名:Wandering Jew 花期は5〜8月 別名:ノハカタカラクサ(野博多唐草)

また「トキワツユクサ」の登場であるが、前回の掲載時に見過ごしていたことがあまりにも多くあったので、書かずにはいられなかったのだ。まず学名を説明すると「Tradescantia」は元は人名らしいが、今は「ムラサキツユクサ属」という意味である。次に「fluminensis」は「ブラジルのリオデジャネイロの」となるから原産地を表しているのだと思う。「フルミネンセ」はリオデジャネイロの愛称で、その名前のサッカークラブがリオデジャネイロにある。「トキワツユクサ」の名前自体に異論はないが、それを別名「ノハカタカラクサ」とするから混乱が生じる。この名前の元になっているのは、当然「ハカタカラクサ(博多唐草)」であるが、その花との強い関係性を示唆するような名称だからである。

「ハカタカラクサ」は実は②「シマムラサキツユクサ(縞紫露草)/ツユクサ科/ムラサキツユクサ属 学名:Tradescantia zebrina(Zebrina pendula)英語名:Wandering Jew」といい、日本語の別名が「ハカタカラクサ」である。学名に「zebrina」とあるのはシマウマがゼブラであるように縞が入っているという意味だろう。葉の中央は緑だが両サイドに大きな白いラインがある園芸種である。そして花の色は白ではなく薄い紫色をしている。「博多」「野博多」と続くと、「ハカタカラクサ(シマムラサキツユクサ)」が野生化したような印象を受けるが、そう受け取ることが間違っていたのだ。「ハカタカラクサ」が帰化しても(実際は帰化してはいない)ハカタカラクサ」のままで、名前は変わらないのだ。だいいち花の色が紫から白に変わるはずがない。ちなみに「博多」とは博多織の帯のことで、その当時に有名だった商品にあやかってつけた名前である。この草を見せて「博多唐草」だと言えば、万人がその意味に納得したのだろう。「博多の帯」はそれほど知られていたということである。
さて、推理小説では容疑者や重要人物をあらかじめ紹介しておかなければならない。推理が終盤を迎える頃に見知らぬ第三者が犯人として登場するのは反則である。よかった、これが推理小説じゃなくて。それほど、前回では探せなかった情報が多く見つかったのだ。

新たな登場人物を紹介する。すべて「松江の花図鑑」のサイトからの情報である。改めて感謝の意を表します。
③「シロフハカタカラクサ(白斑博多唐草)学名:Tradescantia fluminensis 'Viridis'」 南アメリカ原産で園芸植物。常緑多年草。②の「シマムラサキツユクサ」と同じように葉に白いラインがある。花の色は白。

④「ミドリハカタカラクサ(緑博多唐草)」 ③の斑(白いライン)が消えたもので、日本に帰化している。これが一番「トキワツユクサ」に近いような気がするが、話はまだ続くのである。

⑤「シロフツユクサ(白斑露草)学名:Tradescantia albiflora 'Albo-vittata'」 これも葉に白いラインがある。園芸種。

⑥「オオトキワツユクサ(大常盤露草)学名:Tradescantia albiflora」 ⑤の斑が消えたもの。④よりも全体的に大きい。そして「松江の花図鑑」はこう続ける。④と⑥に似ている花として①「トキワツユクサ(ノハカタカラクサ)がある」と。こうなると、私が「トキワツユクサ」として紹介した花も怪しくなる。④か⑥の可能性があるのだ。困ったもんだ。

ここからは推測である。「トキワツユクサ」は昭和の初期に渡来しているが、当然、他のツユクサと同じように園芸種としてやって来たのだろう。ところがさほど話題にもならず、そのために普及が進まなかったのではないか。なぜかというと「トキワツユクサ」の園芸種としての活動の記録が見当たらないのだ。つまり現地への適応力が高く、瞬く間に帰化したと思われる。「要注意外来生物」に指定されているのもうなずける。だが、それでは園芸種としての価値はない。その辺に生えているような花を、わざわざ金を出して買い求めるはずがないからだ。そのようなことがあったので園芸種としての「トキワツユクサ」の記憶は薄れてしまい、その結果、「野博多唐草」のように最初から野生種であるかのような名称も違和感無く受け入れられてしまったのではないだろうか。 突然に帰化種として登場したような印象を受けるのだ。

名前の「博多」の由来にもなっている縞模様が無くなっているのに「ハカタ」とつくから、ややこしい。なんだか「カラクサ、ツユクサ」が「ツキミソウ、マツヨイグサ」のケースとダブる。どちらかに統一してもらいたいものだ。ちなみに①と②の英語名の「Wandering Jew」は直訳すると「さまよえるユダヤ人」であるが、他に何か意味があるのだろうか。「さまよう」のはオランダ人じゃなかったか。

写真:zassouneko
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