ツクシ(土筆)・スギナ(杉菜)/トクサ科/トクサ属
在来種 シダ植物
最初にお詫び申し上げる。写真がおかしなことになっているのは、実は金網が2重になっているためで、一応努力はしたのである。この辺りでは「ツクシ」を見かけないなと思っていたら、3月の上旬に小学校のプールの横で見つけた。喜び勇んで撮影しようとしたら、この有様である。この写真を使うのは諦めて他の場所の「ツクシ」を探したが見つからない。このままでいくと来年まで待たなければいけなくなるので遅ればせながらアップした。助っ人は頼んである。
助っ人の「ツクシ」。外国人選手である。無料画像サイトより。海外のサイトなので、この「ツクシ」も海外のものだろう。
在来種と書いたが「スギナ」は全世界に分布している。「スギナ」の先祖の化石が古生代のデボン紀の地層から見つかっているというから、恐竜よりもはるか以前の話である。
「スギナ」の名前の由来は形が杉の葉に似ているからである。そして「ツクシ」の名前の由来は次の3つが有力である。
①「付く子(つくし)」説 「スギナ」にくっ付くように生えてくるところから。
②「継く子(つくし)」説 ハカマの節の部分から簡単に分離でき、また再び差し込む(継ぐ)こともできるので、どこの場所から切り離したかを当てさせる子供の遊びがあったという。
③「土筆」説 「ツクシ」を地面から生えた筆に見立てたもの。この説が有名だがいささか疑問もある。「土筆→つちひつ→つくし」だと思われるが、「土筆」は「つちふで」か「どひつ」と読むだろうから、「つちひつ」だと「湯桶読み」になってしまう。おそらくこれは名前の由来ではなく、「ツクシ」に適当な漢字を当てはめたのだろう。「ツクシ」は古くから人々に親しまれており、その呼び名は全国に500ほど、「スギナ」も160ほどあったというから、各地でそれぞれ勝手な名前で呼んでいたようだ。言い換えれば、名前を付けずにはいられなかったのだ。
10世紀頃に中国(唐)からきた書物に「木賊」の文字があり、「スギナ」をその範疇に含めることにしたようである。「木賊」の読みには「トクサ」をあてた。この「トクサ」は「砥草」と書き、それは「砥石(といし)」に対しての「砥草(とくさ)」という意味で、これらは物を磨くのに使われる。「砥石」が金属を磨くのに対して、「砥草」は木工の工芸品などを磨いたりするのに用いられる。
「トクサ」3月上旬撮影。巨大な「ツクシ」に見える。
植物は薬として古くから使用されてきた。昔は生薬しかなく(当たり前だが)、それは漢方薬(中国発)と和薬(日本発)に分けられる。「スギナ」も生薬として利用されており、問荊(もんけい)と呼ばれており、服用すると利尿に、また塗り薬としてかぶれに効果があるという。入浴剤としても利用できるという。さて面白いのはここからである。「スギナ」の薬としての効能を日本に伝えたのは中国ではなく、実はヨーロッパなのだ。ヨーロッパでは「スギナ」は古くから民間薬として利用されており、それが南蛮貿易などを通じて伝わったと思われる。江戸時代の初期には「スギナ」の効能は日本でも知られていたようだ。中国伝来でなく、ヨーロッパ伝来という珍しい例である。時代劇に出てくる南蛮渡来の秘薬の一つというわけだ。ちょっと言い過ぎか。
「ツクシ」は春の味覚として知られているが、江戸時代には「スギナ」の若芽も食べられていたという。私も「スギナ」は食べたことはないが、「ツクシ」のおひたしを子供時代に食べた記憶がうっすらとある。ほとんど覚えていないのは、「ツクシのおひたし」などというものに子供が興味を持つはずがないからである。
写真:zassouneko