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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ムスカリの甘い香りは人を惑わす

ムスカリ/キジカクシ科/ムスカリ属
地中海沿岸、南西アジア原産の帰化植物 多年草 花期は3〜4月 別名は「ブドウヒヤシンス」
こんな花までも帰化しているとは驚きである。調べてみたが渡来時期がはっきりとしない。ウィキペディアには「30数年前」と記載があるので、そうなると渡来したのは昭和の終わり頃になる。近年になって入ってきたものは、和名がついていない場合が多く、現地と同じ呼び方をする。中国では、この花を「葡萄風信子」と書くが、この「風信子=ヒヤシンス」は日本で作られた当て字であるという。「ヒヤシンス」と書くのは、同じ科に「ヒヤシンス属」があり、花の感じが似ているからだろう。在来種の「ヤブラン(ヤブラン属)」も同じ科であるが、なるほど、この3者の花の感じは似ている。けれど在来種の「ヤブラン」はさておき、「ヒヤシンス」が帰化しているとは聞かない。「ムスカリ」は30数年で帰化に成功したのだろう。
上:ヤブラン 下:ヒヤシンス(無料画像サイトより) 無料画像サイトで「ヒヤシンス」を検索をすると、「ムスカリ」と「ヒヤシンス」が両方ヒットする。「ムスカリ」は「ヒヤシンス属」ではないのだが、一緒くたにされているようだ。「ヒヤシンス」が有名なので、違う属の植物に「〜ヒヤシンス」と名付けたりするのだ。それが後になって混乱を生む。
「ムスカリ」と聞くとアニメの登場人物のような名前であるが、ちゃんとした由来はある。学名が「Muscari〜」で始まっており、それがそのまま日本での呼び名になったのだ。学名の元となったのはギリシャ語の「moschos(ムスク)」であるといい、これは「麝香(じゃこう)」のことである。「麝香」は雄のジャコウジカの腹部にある「香嚢(ジャコウ腺)」にある分泌物を乾燥させたもので、香料や生薬になる。そんなものを体内に持っているために命を狙われるのは鹿にとっては、とんだ災難であるし、実際に生息数も減っているようである。ただ「ワシントン条約」や、鹿を殺さないで「麝香」を抽出する方法がとられるようになったので、少しはマシになったようだ。当然、輸出入も制限されることになるから、供給不足になる。香料などは化学合成で対応できるが、生薬となるとそうはいかない。興奮作用や強心作用があることから、「救心」やら「宇津救命丸」などに使われているが、手持ちのストックが無くなってしまえば化学合成のものを使わざるを得なくなるだろう。そうなれば漢方薬とは呼べなくなる。 
空き地に生える「ムスカリ」。後ろの方にも生えているのがおわかりいただけるだろう。この空き地の隣のお宅の庭には「ムスカリ」が植えられていたので、そこから逸出したものと思われる。

「麝香」が名前の由来になっているのは、花からムスクのような香りがするからであるが、近所で帰化しているものは「麝香」の匂いはない。香りが無い種が帰化しているのである。「麝香」の香りを持つのは「muscari moschatum(一般にはモスカタムと呼ぶらしいが、レアな種だけあって、読み方が統一されていないようだ)」という種であり、そのような素晴らしい特徴がある花なら当然人気があるのではと思ったが、栽培が難しいという問題があるらしく、普及はしていない。ネットで検査しても、この苗を扱っているところは見当たらないのだ。日本にやって来ている「ムスカリ」は、いくつもあるようだが、帰化出来たのは、この「ムスカリ アルメニアカム」だけのようだ。

これは余談であるが、今回20種ほどの「ムスカリ」の写真を見比べたのだが、私には全部同じに見える。それだったら、ほっといても増える「ムスカリ アルメニアカム」を選んでおけばいいんじゃないのと思うが、マニアはそう考えないらしい。私には関係のない世界の話である。

写真:zassouneko
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