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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ナガミヒナゲシは都会で生きていく

ナガミヒナゲシ(長実雛罌粟、長実雛芥子)/ケシ科/ケシ属
地中海沿岸原産の帰化植物 1年草/越年草 花期は4〜5月

名前の由来は果実の部分が細長いことによる。他のケシの実は球に近い形をしているが、「ナガミヒナゲシ」は一般のケシとは違う「長い実を持つ小さな(ヒナ)ケシ」ということである。英語でも「Long-headed poppy(長い頭のケシ)」という。

1961年に東京の世田谷で初めて帰化が確認されたという。春に花を咲かせ、夏になると種を作って枯れてしまう。だが、その種子は秋になると芽を出してそのまま冬を越し、次の年の春に花を咲かせる。成長途中で冬を越す、つまり耐寒性があるのだ。そして夏に枯れるという性質になったのは、原産地である地中海の気候と関連がある。地中海沿岸の夏は、雨は少なく乾燥しているが、冬は雨が多く寒さも厳しくない。つまり夏は暮らしにくいので、夏前に繁殖を完了させるという道を選んだのだ。
「ケシ粒ほどの大きさ」というのは、とても小さなことを表す比喩にもなっているが、その名の通り「ナガミヒナゲシ」の種子も小さい(「ノゲシ」の項参照)。だが、たくさんの種子を作り出すことができる。この花の分布を観察してみると、道路沿いに生息地を拡張していることから、種子は風に運ばれるだけでなく、自動車のタイヤなどにくっ付いて移動しているのではないかと言われている。それが事実ならば、風や動物に種子を運んでもらうのではなく、車を利用するという新しいパターンの登場である。
日本に帰化して繁殖できたのは、日本の冬の寒さに耐えることが出来たこともあるが、それだけではない。前述したように繁殖に不可欠な種子の数がとても多いのである。1つの果実には1,000粒以上の種があり、1つの個体は多い時には100本の花を咲かせるので、それだけで10万粒の種が地上に蒔かれることになる。そのうちの0.1%の種子が発芽すると、1つの個体から100本の「ナガミヒナゲシ」が誕生することになる。またアルカリ性の土壌を好む性質があるが、街中で必ず見かけるコンクリートは強いアルカリ性を保持しており、それが雨などの影響を受けて土壌をアルカリ性にしているというから、都会は「ナガミヒナゲシ」に良好な環境を提供していることになる。

今のところ環境省の「要注意外来生物」に指定されてはいないが、専門家は注意を呼びかけている。その警戒すべき性質の一つに「アロレパシー作用」がある。これは根や表皮などから、他の植物の成長を妨げる物質を放出する能力があるということで、言ってみれば「飛び道具」を使用する植物だ。「アロレパシー」で知られている代表的な植物に「セイタカアワダチソウ」がある。
見た目は弱々しいが、鮮やかなオレンジ色の花を咲かせる。「ナガミヒナゲシ」はこの外見のおかげで侵略的外来生物という非難をかわしているようだ。都会に住んでいて、容姿が整っていて、車で移動して(種が)、手荒に扱われない。えー、別に一部の女性のことを揶揄しているのではないので勘違いをしないように。

写真:zassouneko
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