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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

セイバンモロコシ/トウモロコシの詐称疑惑が発覚

セイバンモロコシ(西蕃蜀黍)/イネ科/モロコシ属
ヨーロッパ地中海地域原産 多年草 花期は8〜10月

野蛮な国から来た植物
名前の由来は「西蕃」からきた「モロコシ」である。「蕃」とは、王の支配や影響が及ばない(=毛外/けがい)地域や国のこと。未開で野蛮な人々が住んでおり、占領する魅力や価値も見出せない。また、こちらにも何の影響も及ぼさないのであるから放っておくに限る。そうなると「蕃」という表現は褒め言葉ではないだろう。「西蕃」は「西にある未開の地」であって、これは今のチベットあたりを指しているらしい。そこに行こうにも途中に砂漠もあるし、とてつもなく遠い。向こうから攻めてこないのなら誰だって無視するだろう。この「セイバンモロコシ」は、そんな未開な地域から来たとされたが、実際はもっと西の出身だ。当時の先進国ともいえる地中海沿岸からやって来たのである。
上の写真:穂の出始め。すでに穂が赤く色づいている。下から押されて無理やりに出てきているようにも見える。「セイバンモロコシ」は葉っぱの中央の白いラインが太くハッキリとしているのが特徴です。また葉も長く大きくかなり幅広になる。

「高黍」は今でも重要な穀物
「黍」は「キビ」だが種の違う「高黍(別名:蜀黍)」は日本では「モロコシ」と読む。中国などでは「高粱(コーリャン)」と呼び、穀物としての利用ばかりでなく、白酒(パイチュウ)や茅台酒(マオタイ酒)の原料ともなる。日本ではあまり見かけないが、世界中で栽培されており、穀類では小麦、稲、トウモロコシ、大麦に次いで5番目の生産量を誇る。意外なことにアメリカの生産量が一番多い。最近では「グルテンフリー」に品種改良されたものが生み出され、小麦アレルギーの症状を持つ人にも利用できる商品の開発が進んでいる。

「高黍(蜀黍)」を「モロコシ」と読むのは無理がある
「高黍(蜀黍)」が「モロコシ」となったのは、昔の日本人はその当時の中国をそう呼び(唐土=モロコシ)、また、そこから伝来した物もそう呼んだからである(詳細は省く)。「モロコシ」というと今では「トウモロコシ/イネ科/トウモロコシ属」が頭に浮かぶ。これを素直に漢字にすると「唐高(蜀)黍」となる。「唐から来た高黍に似た黍」の意味だ。漢字でそう書くのは正しい。ただ、これを「トウモロコシ」と発音するのは疑問が残る。すぐ上にも書いたが「モロコシ」には「唐(国)」や「唐から来た物」という意味があるからだ。なので「トウモロコシ」は「唐から来た唐の植物に似た植物」となる。「高黍」を「モロコシ」と人々が呼ぶようになった時点で混乱は始まっているのだ。

トウモロコシの災難
本来ならば「トウモロコシ」は「玉黍(タマキビ/キビなのに大きな玉のような実がなる)」や「唐黍(トウキビ/唐から来た黍に似た植物)」と呼ばなければならないのだ。古くあやふやな話だが、祖母は「トウキビ」と呼んでいたような記憶がある。現在「トウモロコシ」を漢字で書くと「玉蜀黍」となり、これは今の中国でも同じように表記する。「玉のような実をつけるコーリャンに似た植物」の意味である。名前としては正しい由来だ。漢字での表現には問題はない。問題は読み方と発音の方だ。

「トウモロコシ」の原産は中米でコロンブスがヨーロッパへ持ち込んだ。つまりヨーロッパ→西アジア→古代中国→日本の順だ。結果的に「唐」から来たので、日本では「トウ(唐の)モロコシ」と名付けられた。「ジャガイモ(ジャカルタから来た/南米原産)」や「カボチャ(カンボジアから来た/中南米原産)と同じである。

喋り言葉は矛盾しているが書き言葉は合っているという、おかしな状況なのだが、歴史的背景からみると、致し方ないという気もする。もう「トウモロコシ」で定着しているので、そう呼ぶしかないだろう。そうでなければ「コーン」とでも呼ぶしかないが、それでは「となりのトトロ」の後半部分が味気ないものに思えてくる。病気のお母さんに届けようとしたのは「とうもころし」であって「コンー」ではいけないのである。なんとなくだけど。

日本では「米は主食」と言われるが、それは近年のことであって、安定して供給されるようになったのは第二次大戦後のことだ。それまでは足りない分の米は輸入に頼っていたのである。つまり日本人は最近まで、米(稲)、小麦、キビ、ヒエ、アワなどを食べていたのである。
参照:「ヒエ(稗/ヒメイヌビエ/2015.8.16)」掲載、「アワ(粟/エノコログサ/2015.5.19)」掲載。
おまけ:ランドセルで有名な会社「セイバン」は「カバンの製造=製(カ)バン」と、当時の会社の所在地が兵庫県で西播磨と呼ばれていたことから、名付けられたという。

追記・訂正:2015.11.3/タイトル『とうもろこしの災難」より変更(2015.11.7)
写真:zassouneko 撮影:2015.10月下旬
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