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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

雑草とは何だ/その3/古典にみる雑草2

別の記録によると、粮莠(狗尾草の類/イネ科)、莠(水田に生える雑草)、倹草(メヒシバの別称/イネ科)など現在の雑草にあたる言葉がある。読み方はすべて「ハグサ」である。「ハグサ」は「端草(はしくさ)」から変化したという。田んぼや畦道、稲の端に生えてくることから付いた名前であろう。これらのすべては稲作に関連している。米作りの際には稲以外を選別し対処しなければならないが、イネ科の植物は稲によく似ており(当たり前であるが)、若いうちは区別がつきにくい。除草の際などに「おーい、これはイネか?」「そりゃハグサだ、抜け抜け」という訳だ。田んぼに生える稲とそれ以外の草=ハグサということだ。「ハグサ」は庶民の言葉である。ここでも雑草とは呼んではいないし、「ハグサ」と呼ばれるのは田んぼの周りの草に限られている。

新潟県柏崎市の石黒という地区では近年まで「はぐさ」はイネ科の雑草一般を指していたと、個人のブログで知った。このブログを記載した人が実際に使用していた言葉で、畑の雑草を指す言葉だという。現在のように何でもかんでも雑草に区分するという態度ではなく、畑作の妨げになる草のみを指している。それは極めて限定的な使用であって、道端の草をそう呼ぶことはない。

「雑草」は英語の「weed」の訳として新たに作り出されたという指摘をネットで見つけた。日本初の英和辞典は1862年に幕府洋学調所が発行した「英和対訳袖珍辞書」であるが、ここに「weed」は見当たらない。「weed=雑草」という訳が出てくるのは、これ以降のことだろう。

歌人の斎藤茂吉の歌集「つゆじも」の中に「あらくさの繁(しげ)れるを見ればいけるがに地息(じいき)のぼりて青き香(か)ぞする」という、病気療養中だった大正9年の7月に詠んだ歌がある。「あらくさ」とは今でいう草(雑草)を指し、荒々しいまでの生命力あふれる雑草の姿と弱々しい自分の現在を詠んだものだ。また一般に「なつくさ」「ふゆくさ」という言葉も使われる。芭蕉の「夏草や兵どもが夢の跡」はあまりにも有名である。俳句に見られる「雑草」は種田山頭火の「やつぱり一人がよろしい雑草」という句が昭和11年発行の句集に載っているという。この時代には「雑草」という言葉が一般化したと言ってもいいだろう。

写真:zassouneko 「メリケンカルカヤ」
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