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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

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ダキバアレチハナガサ/ラテンの花には祭が似合う

ダキバアレチハナガサ(抱き葉荒地花笠)/クマツヅラ科/クマツヅラ属
南アメリカ原産の帰化種 多年草 花期は6〜9月と記載があるが10月になっても咲いている。今年(2015年)は暖冬だというが、その影響は大いにあると思う。植物は自然(気候)に正直であるからだ。

●「花笠」とは花などで飾り立てた笠のことで、山形の「花笠まつり」が有名である。
●花が上部に集中して咲いている様子を「花笠」に見立てた。

名前の由来は「アレチハナガサ」に似ているが葉が茎を抱くように(巻き込むように)ついているからというもの。「アレチハナガサ」があるのだから、荒地に咲かない「ハナガサソウ」もあるだろうと探したのだが、「ハナガサソウ」は「キヌガサソウ(衣笠草/ユリ科)」の別名とあった。科も違うし姿形も似ていない。北アメリカ原産の「ハナガサソウ」があるという記述を見つけたが詳細は不明だ。

仲間はたくさんやって来ている
名前を特定した経緯を説明しよう。候補は4つ見つかった。原産地はいずれも南アメリカで、鑑賞用や緑化植物として輸入されたと思われる。すべて「クマツヅラ科」(2015.6.30投稿:「ランタナ/美しき侵略者」参照)の「クマツヅラ属」である。
①「シュッコンバーベナ」明治時代に渡来。「宿根バーベナ」と書く。
②「ダキバアレチハナガサ」1933年の大阪での記録が最も古いものとされる。
③「ヤナギバアレチハナガサ」1940年代から東海地方を中心に見られるようになった。
④「アレチハナガサ」1957年頃から見かけるようになった。
それぞれの特徴を勘案して②の「ダキバアレチハナガサ」とした。

ラテン生まれだが控えめだ
いずれも環境省の「要注意外来生物」のリストには載っていないので、控え目な性格なのだろう。帰化種にしては大人しい印象で、咲く花が少なくなる秋の庭に生えていてもいい感じだ。この草は同じ「クマツヅラ科」の「ランタナ」同様、茎の形が少し丸みのある四角だ。報告は以上である。新顔の園芸種なのでさほど話題がないのは残念だ。「クマツヅラ属」の植物の幾つかを総称して「ビジョザクラ(美女桜)」と言うそうだが、その名が世間に浸透しているとは思えない。「桜」を安易に持ってくるのはいかがなものか。
長男だけど「一郎」ではない
さてここで名前に関して面白いことに気がついた。まず①の「シュッコンバーベナ」は「宿根バーベナ」と書くが、この「宿根」とは多年草のうち特に根の部分が発達しているものを指す植物用語である。それはいい。問題は次の「バーベナ(Verbena)」である。これは学名の頭の部分をそのまま読んだものだ。日本語に訳していない。最近はマンゴーとかアボカドなどを見ればわかるが、あえて日本名をつけることはしない。①はこの中では一番最初に日本にやってきており、学名の「バーベナ」という名前がついているが、それ以降にやって来た②〜④の植物には「〜ハナガサ(花笠)」と、日本語の名前がついている。何かおかしい。

それだけではない。前述したが「アレチハナガサ」という名前の植物が、その時点で存在していない(日本に来ていない)にも関わらず、②や③の「ダキバ」「ヤナギバ」という形容詞がついた草が存在している。変な話である。なぜなら名前の付け方からいって最初に存在していなければならない「アレチハナガサ」は、一番最後に日本にやってきたのだ(上記④参照)。日本に存在しない外国の草花に、いちいち和名をつけることは普通はしないだろう。それをやりだすとキリがない。最近は和名を付けずに、カタカナ読みで済ませる場合がほとんどだ。

「コバンソウ」の項でも述べたが、考えられる要因の一つとして、海外の図鑑などを見て「アレチハナガサ」という和名を1933年以前につけていたという場合だ。つまり実物は日本には生えていないが、とりあえず名前だけは決めていたというケースだ。それがあるから、後からやって来た少し違う特徴を持つ草に「ダキバ」や「ヤナギバ」と名付けたのだ。ただ、この推理は無理がある。日本に存在しない植物に、いちいち和名をつける必然性がないからだ。

もう一つの可能性は4種すべて出揃った状態で「せーの」で名前を付けた(付け直した)ということだ。日本国内に存在が確認され、分類が必要になったのだ。だが、これでは①の「シュッコンバーベナ」の立場がない。なぜ、この草だけ和名がつかなかったのだろうか。日本に最初にやってきたのに和名がついていないのは、奇異な感じがする。

このように植物の名前は、時たまおかしなことになる。まあ、ここで取り上げているのは、あくまでも「和名」であって、学術的な裏付けなど必要としない、人々にわかりやすいように命名された通称名でしかない。その結果、時間や種を飛び越えてしまうような名称が付くこともある。命名者も苦労するところである。一般的に万人が納得するような名称が求められるからだ。まあ正確さを求めるならば、学名を使えばすむ話ではあるのだが。
写真;zassouneko 2015年10月上旬
追記&訂正「ダキバアレチハナガサと秋の1日を過ごす」からタイトルを変更しました。(2015.11.9)
加筆&訂正(2016.1.18/2016.1.28)文章を一部加筆・訂正しました。
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