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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ツタバウンランと枯山水の庭

ツタバウンラン(蔦葉海蘭)/オオバコ科/ツタバウンラン属
地中海原産 つる性の多年草または1年草 花期は夏

●「海蘭」と書くが「蘭」ではない。
●乾燥した場所が好き。

侵入年代は1912年とあるが、それが輸入された年なのか帰化を確認した年なのかは不明である。名前の由来は「海蘭(「うんらん」と読む。日本の在来種で海岸の砂地に生える多年草。ゴマノハグサ科)」に花の形が似ているが、「つる性」の特徴を持つ植物だということからだ。「ツタバウンラン」は以前はゴマノハグサ科であったが、近年になって新しい分類法ではオオバコ科に変更された。なお「海蘭(うんらん)」がゴマノハグサ科という資料は見つからなかった。
「海蘭」は海に近い場所に生える「蘭」という意味であるが、「海蘭」自体はラン科と何の関わりもない。ただ花が蘭に似ているからという理由で「海蘭」と名付けられたのだ。ランの花は人気が高く、また人に知られてもいるので、分かりやすい名前を付けたのだろう。それが後々混乱を生むことにも繋がる原因でもあるのだが。

名前の「蔦葉(つたば)」とは「蔦」の葉と似ているという意味である。この「蔦」とはブドウ科ツタ属の植物(アマヅラ、ナツヅタ、モミジヅタなど)の総称であるが、葉の形はそれぞれ違うので、ここでもまた混乱する。しかもツタ属は草ではなく「木」なのだ。
この草は主にロックガーデンでの利用を目的として輸入されたようである。これは「ヒメツルソバ(2015.7.4記事)」と同じ理由だ。ロックガーデンとは岩や石、砂利や砂がレイアウトの中心になり、そこに植物を配する形となる。サボテンなどを配置することも多い。まあ、これは言ってしまえば日本庭園の対極にある形と言ってもいい。著名な日本庭園を思い浮かべていただきたいが、必ず「池」「小川」「水辺」の景色が必須である。豊かな水と色とりどりの木々や多彩な植物は我々に「大地の豊穣(飢えることのない)」を意識させるある種の桃源郷である。つまり豊かな大地に美しさと安心を見出すのだ。それに対し日本のロックガーデンといえる瀧安寺の石庭(英語でJapanese rock gardenともいうらしいが)などは、岩(山の象徴)や砂(水の象徴)を配しただけの、生物の躍動感のない無機質な庭だ。小さな岩を山に見立てるという、極めて抽象的な主張がある。さすが禅寺の庭である。

大正(今から100年以上前)の時代に西洋のロックガーデンを受け入れることが出来たのは、枯山水が日本に存在していたことと無関係ではあるまい。その基盤があったからこそ、新しい美の表現(ロックガーデン)を受け入れることが容易だったのだ。ロックガーデンのための植物が海外から輸入されたのは、植物自体の物珍しさもあるが、日本にはロックガーデンが表現しているような乾燥した地域がないので、その環境に適した植物も存在していないのだろう。しいて探せば海岸の砂浜に生えているような植物だろうか。ああ、それは「海蘭」のことか。

祖国(原産地)から遠く離れた異国の地で、たった一人(?)で咲いている帰化種を見ていると、心の中で問わずにはいられない。植物は今何を考えているのだろうかと。返事のない問いかけであるが、そのことが頭に浮かんで離れない。
追記&訂正:2015.12.13/写真を追加しました。
写真:zassouneko
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