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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

オギはススキではない

オギ(荻)/イネ科/ススキ属
在来種 多年草 花期は9〜10月

●穂は「ススキ」より白く手触りがよいが、葉のふちを迂闊に触ると手が切れる。
●ガラスの原料であるケイ素を多く含んでいるので、燃やした灰からガラスの材料が得られる。

源順(みなもとのしたごう)の「倭名類聚抄(934年)」には、荻(漢名=中国名)は「和名乎木(たぶん「おぎ」と呼ぶんだろうな)」との記載があるようだ。「荻」は漢和辞典によると「漢音でテキ」と発音するらしいので、それで思い出したのは「夷狄(いてき=昔の中国の言葉で北東に住む野蛮人のこと、蔑称)」であったが、よく見ると字が違った。発音は「ogi」だけのようで、文字の方は人名や地名でも見かけるが、それでも「荻原」「荻野目」「荻生徂徠」と「荻窪」ぐらいだ。人気がないのか。どうでもいいが「荻(オギ)」は「萩(ハギ)」と似ているよね。昔、何度か間違えたことがあるよ。「萩原」さんと「荻原」さんを。

「オギ」と「ススキ」の違い
最初は「ススキ」だと思っていた。「ススキ」は山中や野原に生えるが、「オギ」は川や湖、池近くの湿った場所に生えると、ほとんどの資料に書いてある。写真の場所は都市の住宅街の空き地であって、川や池などは近くには無い。そうなると「ススキ」でしかないが、穂の色があまりにも白いので「オギ」であるような気もする。「ススキ」は全体に茶色がかっているのだ。

「ススキ」は根生するとある。「根生」とはある1点を中心にして葉を放射状に伸ばし、茎はその中心部あたりから出てくる。対して「オギ」は根が横に伸びて、そのところどころから茎が伸びる。また葉は茎の下から中心部あたりにかけて生えてくる。
上の写真のように根元にはほとんど葉がないので「根生」ではない。また「オギ」の「芒(のぎ=イネ科によく見られる実の部分につくヒゲのようなもの、毛ではない)」は無いか、とても短いと書いてある。実物を見ると「芒」は見えない。やっぱり「オギ」である。話は変るが、この「オギ」の毛の手触りがとてもいい。まるでウサギを撫でているようだ。「ススキ」ではこうはいかないらしい。皆さんも是非触っていただきたい。
川や池などの水中には水草が生えるが、岸辺には「葦(あし)」が生え、「オギ」はその後ろに生える。昔の人はこれらの草を冬場に刈り取って、屋根を葺いたり、生活用品(ぞうり、わらじ、茣蓙、すだれ)を編んで作った。これらの草はまとめて「茅(かや)」と呼んだ。だから「茅葺き屋根」の材料は「葦」や「荻」、「ススキ」などが使われた。(「メリケンカルカヤで内職は出来るのか」/2015.9.30投稿参照)

雑草たちの行く末は
この場所へは3回ほど足を運んだ。巨大な「セイタカアワダチソウ(2015.10.1記事)」の写真を撮ったのもこの場所である。「荻」の写真を撮っているとライトバンに乗った年配(私も年配だが)の2人連れがやって来て、この空き地を見て何事か相談していた。脇を通り過ぎる際に、何の写真を撮っているのかと尋ねられたので、それをきっかけに少し話をした。彼らによると、この空き地の草刈りを任されたのだという。それが急な話でもあったので、とりあえず実際の現場を見て、その後の仕事の段取りを話し合っているところだという。どうやら草刈りの理由は「セイタカアワダチソウ」にあるようだ。近所から「花粉症」の苦情が来る前に、刈り取ってしまいたいというのが地主の希望らしい。そこで「セイタカアワダチソウ」は花粉症とは関係ないことなどを軽く話をした。その事実に彼らも意外だったようである。まあ、それでも刈られるのだが。少しは雑草たちへの理解につながったと考えれば気分は悪くない。それにしても2日前にブログに「セイタカアワダチソウ」の記事の中に、「やがて刈られてしまうだろう」と書いたが、本当にそうなってしまうようだ。

花粉症の加害者になることを避けようとして、しかも業者に依頼して刈り取る必要などないのにと思うが、実態を知らないと、こういうことになる。まあ、単に見栄えが悪いからということもあるだろう。業者の話だと表面を重機で片付けるようであるが、それでは根は残る。来年も空き地のままであれば「セイタカアワダチソウ」と「オギ」は生えてくるだろう。そして業者に依頼が舞い込む。こうやって経済は回っていくということだ。
写真:zassouneko
加筆&訂正(2016.1.17)文章を一部訂正・加筆しました。
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