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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

セイタカアワダチソウ/花粉症の犯人の汚名は挽回されるか

セイタカアワダチソウ(背高泡立草)/キク科/アキノキリンソウ属
北アメリカ原産の帰化植物 多年草 花期は8〜10月 高さは1〜2.5m

●秋の花粉症の原因とされたが誤解である。原因は「ヨモギ」や「ブタクサ」だ。
●秋に咲く花は少ないので虫やミツバチ達の貴重な蜜源である。

1900年頃(明治の中頃)に「萩(ハギ)の花の代用」として輸入されたという説を見かけたが、秋の七草の一つで赤紫の花を持つマメ科の「萩」と、黄色の花を持つキク科の「セイタカアワダチソウ」では観賞用として代用になるとは思えない。何か特別な用途の製品でも作るのかと考えたのだが、養蜂業の採蜜用として輸入されたという説を見つけた。つまり「採蜜」を目的とした「萩」の代用品である。その意味なら納得できる。

名前の由来がなかなか複雑なことになっている。要は「背の高い泡立草」という意味である。 「背の高い」は「泡立草」にかかる形容詞であるから、それはいい。さてここからが本題となる。「泡立草」とは「アキノキリンソウ」の別名であり、細かな花が小さな泡が無数についているように見えることからそう呼ばれるようにもなった。つまり「セイタカアワダチソウ」は他の草の別名を自らの本名にしたのだ。写真で見る限りでは「アキノキリンソウ」の花は「セイタカアワダチソウ」に比べれば「泡立ち」具合は劣っているようだ。「セイタカアワダチソウ」はそれにふさわしい姿であるから、堂々とそう名乗ってもよいだろう。「セイタカアキノキリンソウ」でもよい気がするが。

次に属名にもなっている「アキノキリンソウ」であるが、「アキノ(秋の)」を除けば「キリンソウ」が残る。これは秋に咲かない本家本元の「キリンソウ」のことだ。だがこの本当の「キリンソウ(春に咲く)」は「ベンケイソウ科キリンソウ属」であるので科も属も違う。つまり始まりは「ベンケイソウ科」の春に咲く「キリンソウ」で、その姿に似ている秋に咲く「キク科」の植物を「アキノキリンソウ」と名付けた。その花を見た人は小さな花が泡立っているように咲いているので「泡立草(アワダチソウ)」と呼ぶようになった。時が経ち北アメリカより「キク科アキノキリンソウ属」の植物がやって来て帰化した。そうなると和名が必要となるから、「アキノキリンソウ」の別名をもってきて「セイタカアワダチソウ」としたようだ。まあ「アキノキリンソウ」と「キリンソウ」では科も属も違うので、これ以上の混乱を避けるために「アワダチソウ」の名を冠したような気がする。「セイタカアワダチソウ」の別名を「 セイタカアキノキリンソウ」とする場合もあるようだ。まあ同じ科の植物の名前だけを参考にするならば、そうなるわなあ。

この花を「セイタカアワダチキリンソウ」と記憶していたので、名前を間違って覚えていたのかと思っていたが、前述の名前の変遷からすると、あながち間違いではなかったようだ。

1970年頃から在来種を圧迫する被害が目立つようになったという。詳しい経過は「外来種は強いのか?/ある外来種の物語」を読んでいただきたい。

一時期、たくさん咲き乱れる花を持っていることから秋の「花粉症」の犯人の一人にされたこともあったが、冤罪だったようだ。花粉を風に乗せて飛ばす「風媒花」ではなく、虫に運んでもらう「虫媒花」であったからだ。前述したようにミツバチが蜜を取るのに利用する花だということからも理解できる話だ。風に乗せて花粉を飛ばす「風媒花」の花粉は「軽く、小さく、数多く」が基本となる。これはある意味、運任せの方法だ。それに比べ「虫媒花」は、花から花へと飛び回る昆虫が花粉を運ぶので受粉の可能性は遥かに高くなる。時たま違う種類の花に寄り道してしまうのが玉に瑕ではあるが。そういったわけで「虫媒花」の花粉は「重く、大きく、少量」であっても、さほど問題ではない。その代わり虫たちに花粉を運んでもらうためには「花は目立つように、蜜をたくさん出す、よい香りがする」といった努力が必要となってくる。実際「虫媒花」の方が花が大きく、匂いも強いものが多いそうだ。花の香りは人間のためにあるものではないのだ。

冒頭の写真は去年の10月下旬のもの。文中と下の写真は昨日(9月29日)に撮影したものである。特に真ん中(文中)の写真は「背高」の名に恥じぬ大きさで2mを軽く超えている。あと数週間後には花が満開となると思われるので、そうなると伐採されてしまうかも知れない。冤罪とは言え、一度付いてしまった悪名はなかなか拭いがたいものである。気の毒でさえある。
撮影:zassouneko
2015.10.2にタイトルを「セイタカアワダチソウ/汚名は挽回できるのか」から変更しました。
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