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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

メリケンカルカヤで内職は出来るのか

メリケンカルカヤ(米利堅刈萱)/イネ科/メリケンカルカヤ属(またはウシクサ属)
北アメリカ原産の帰化植物 多年草 花期は9〜10月 高さは50cm〜1m程

最近になって仲間入り
1940年頃に愛知県(地元だ)で初めて確認されたという記録があるので、比較的新参者といえる。この雑草は奇妙な姿をしている。実の部分が目立たないので、全体が1本の細長い棒にしか見えない。成熟して白い毛が出てくるようになると、ようやくイネ科の雑草っぽくなる。名前の「メリケン」とは「アメリカン」のことであるが、ネイティヴの発音をそのまま日本語で表現したものだろう。普通に「アメリカ」としなかったのは戦争の気配を感じとっていたからなのだろうか。ただ「メリケン粉」「メリケン波止場」など、今でも言葉として残っているものはあるから単に敵性語という扱いではないような気もする。
名前の由来がわからない
名前の由来は「米国産(アメリカ)」の「刈萱(カルカヤ)」という意味であるが、「カルカヤ」という名の植物は存在していないのである。「カルカヤ」とは文字どおり「萱を刈る」という意味でしかなく、強いて「カルカヤ」を探すと仏教の説話の一つとしてならある。また「萱(カヤ)」という草はなく、「萱草(カンゾウ)」と表記すれば、それはユリ属の花を指す。ただし「榧(カヤ)」という樹木ならある。「萱(カヤ)」とは、ある種類の植物の総称なのだ。「ソメイヨシノ」や「オオシマザクラ」をまとめて桜と呼ぶのと同じことである。

いろいろな商品を生み出す
さて、これからいささか面倒くさい説明をする。自分でも充分に理解できているとは思えないので自信がないが、まあ聞いて頂きたい。古来日本人は木を始めとして植物を色々な形で利用してきた。まあ、ここは雑草のブログなので「木」の話はもともと取り上げないのであるが。それはさておき、草の利用法としては屋根を葺くのに使ったり、「笠(かさ)」「蓑(みの=今でいうレインコート)」「ぞうり」「わらじ」「すだれ」「ござ」「畳」など、様々なものを作り出してきた。では、これらに使われる植物はそれぞれ別であるというのはご存知だろうか。植物を使った全ての商品の説明はできないが代表的なものをざっと挙げてみる。
目的によって使われる植物は違う
童話「3匹のこぶた」に藁(わら)で作った家が出てきたり、「藁葺き屋根の農家」などと聞くことがある。ここでいう「藁」とは「稲」や「麦」のことを指している。また農閑期に農家の副業として「草鞋(わらじ)」や「草履(ぞうり)」なども編んだという。この2つの履物の素材は「藁」と決まっているわけではない。

また同じように「笠(かさ)」や「蓑(みの=今でいうレインコート)」も作ることもあるようだが、これらに「藁」は使われない。使用されるのは茅(カヤ/これも植物の総称)と呼ばれるススキ(イネ科ススキ属)やカヤツリグサ(カヤツリグサ科スゲ属)であって、その種類は多い。合掌造りで有名な白川郷の屋根も「茅」である。これらに「藁」を利用しないのは理由がある。「茅類」は油分があり水をはじくが「藁類」は水を吸ってしまうのである。前出の「藁葺きの屋根」などは「茅葺き」に比べると水分を含んでしまうので劣化が早くなる。当然「笠」や「蓑」も雨水をはじく「茅類」が使われる。そのために農家などは「茅」を栽培していたそうである。
「簾(すだれ)」は「葦(アシ)類」を使用する。「アシ」=「悪し」に通じるので縁起が良くないとして「ヨシ」=「良し」と呼ばれることが多い。「葦簀(よしず)」がその例だ。「畳(タタミ)」「茣蓙(ゴザ)」などには「藺草(イグサ)類」が用いられることは有名だろう。「茣蓙」のような敷物を「藁(わら)」で作ると「莚(むしろ)」や「菰(こも)」になる。関西落語には度々「おこもさん」が出てくるが、これは現在でいう乞食のことで道端に「菰」を敷いて物乞いしていたからだろう。今までに挙げた商品は現在では使用されないものや原材料が化学製品に変わってしまったものもある。しかし最近は一時は落ち込んでいた「畳=イグサ」の人気が高まっているという話もある。

肝心の「メリケンカルカヤ」の話題が少ないのは人との関わりが無いからだが、この草も「茅」の仲間であるから「笠」や「蓑」を作ることが出来る。「茅類」の復権はやって来るのだろうか。一番の疑問は、何で「カルカヤ」は「カルガヤ」と「ガ」に濁点が付かないのかということだ。どうでもいいっちゃ、どうでもいいことだが。
すぐ上の写真の撮影場所は名古屋市東区の「文化の道」にある「二葉館」の裏庭です。ここは「ヒメコバンソウ」が一面に咲いたりすることもある、なかなか面白い場所です。
追記&訂正:2015.12.13/文章を追記し、写真を追加しました。
写真:zassouneko 撮影2015.09.29
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