ネズミノオ（鼠の尾）／イネ科／ネズミノオ属
在来種 多年草 花期は9〜10月
名前の由来はネズミの尾に似ているからだ。ところで私はもう少しで還暦を迎えるような年齢なのだが、ネズミを見たという記憶があまり無い。ラットやらマウスの映像を見たことはあるがネズミとなると心もとない。昭和という時代を過ごした幼少の頃の記憶をたどってみても思い浮かばない。記憶にあるのは山手線の駅で電車待ちをしている時に、線路脇でよく見かけたことぐらいだ。新宿や渋谷でも見た記憶がある。かなり大きな個体で、おそらく「クマネズミ」と呼ばれているやつだと思う。もう20年ほど前のことだ。ビルの密集した大都会の方がネズミに遭遇する機会が多いようだ。
9月のシルバーウィークにあまり行く機会のない辺りに出かけてみた。小さなグラウンドや遊具も置いてある中規模な公園の端に、散策路のある小山のようになっている場所があった。小山は雑草だらけである。そこにこの雑草が生えていた。久しぶりにイネ科の新顔を発見して胸躍る。ここで「胸躍る」と書いたのはイネ科は随分と画像検索したので、何となく見覚えのあるこの雑草の名前は比較的簡単に判明するだろうという安堵の気持ちも入っているからだ。少し遠出をすると見たこともない雑草によく出会う。高さが10cmもなく肉眼でははっきりと確認できない（私は老眼である）ほどの小さな花をつけている雑草を見かけたりすると「新顔発見！」と喜ぶと同時に「どうやって名前を知ればいいのか？」という、これからの苦労を思うと少し気持ちが沈む。
この「ネズミノオ」は古くからいる在来種の割に人との関わりがあまり無かったようで、どのサイトを見ても扱いはあっさりとしている。要は「ありふれた利用価値の無い」雑草の一つのようだ。だがこの雑草は面白い特徴を持っている。成熟すると種が殻を割って出てきて剥き出しの状態になるのだそうだ。「稲」や「麦」は我々に有用だが脱穀という面倒な行程が必要である。ところが「ネズミノオ」はそれを省いてくれているのだ。何と親切な草だろうか。もっともその実が1mmほどしかなく、収量が極端に少ないという残念な事実が存在するのであるが。
こうした形状を持つ草を動物の尾にたとえるケースは他にもあって、「エノコログサ（2015.5.19投稿参照）」は犬（地域、国によって狐、猫）で、「トラノオ（虎の尾）」と呼ぶ草もある。ただしこの「トラノオ」は「九階草（クガイソウ、九蓋草とも書く）」というゴマノハグサ科の植物の別名であって、名前に「トラノオ」と付くのはサクラソウ科の「オカトラノオ」だ。また園芸種で「ハナトラノオ」と呼ばれているものはシソ科の植物であるという。人は同じような名前が付いていると近縁で仲間であると思いがちであるが、そうはいかないようだ。名前というものは面倒くさい一面を持っているのだ。
最初の方にも書いたが、元のネズミの尾をよく知らないというのに、その形状を雑草から教えてもらうのは何だか本末転倒のような気がする。最近では魚を切り身の状態でしか知らない子供が増えているようであるが、そのうち犬、猫以外の動物を見たこともないという人が出てきてもおかしくはないだろう。ハンバーガーが大好きだが牛の姿を知らないというようなことだ。これは批判すべきことなのか無知を笑うところなのか判断ができない。批判すべき明確な理由が私には見当たらない。宗教的な理由ならあるのだが。
雑草と関係の無い話だが、iPad AirをiOS9.0にアップデートしたところ「カレンダー」が立ち上がらなくなった。バグか？何か他のアプリとバッティングしているのだろうか。折しもアップルが不正なXcodeで作成された情報漏洩の恐れのあるアプリをApp storeから削除したというニュースが入ってきた。無料のアプリを何本かダウンロードしたので気になるのだが、そのアップルが削除したアプリの名前が分からない。appleのサイトのどこに詳細な情報があるんだろうか。この会社はユーザーに対して時々高飛車な態度をとる。独自技術（ファイヤーワイヤーとか、そういえば最近も新しい転送の規格を出してきてたな）を採用しては数年後に何食わぬ顔で撤回したりする。つまり対応機器（ハードディスクとか)が割高でユーザーは余分な支出を迫られる結果になる。ここ最近は興味をかき立てられる商品を見かけないな。何だよ、あの時計とMacBookは。裸の王様になっていないか。
写真：zassouneko/2015.09.21
