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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

オシロイバナ/何で化粧品が出てくるのか

オシロイバナ(白粉花)/オシロイバナ科/オシロイバナ属
南アメリカ原産の帰化植物 1年または多年草 花期は8〜10月 別名:ユウゲショウ、オシロイ

あまりにも知られている花なので、ブログの対象として目に入っていなかったが、江戸時代の初期にはやってきていたようであるし、すっかり日本に馴染んでいる。そうなると取り上げない訳にはいくまい。別名の「ユウゲショウ」とは夕方から花が咲くからだ。英名でも"Four-o'clock"と呼ぶそうだ。幼少の頃の話だが、この花をむしってその根元を吸うと、かすかな蜜の甘みを感じるのが楽しかった。それほど親しんでいたのに何で「オシロイバナ=白粉花」というのか、考えてもみなかった。まあ興味が無かったんだろうな。花の香りはストレートに甘い匂いがする。草っぽい匂いは一切無い。ところで花のように見えるのは実は萼(がく)であって、この花は花弁を持っていないらしい。

昔はこの花の種子の胚から白粉を採っていたそうである。正確にいうと胚から取り出したデンプンを白粉として使用していたこともあったそうだ。「キカラスウリ」と同じような利用法だ。世間のことは分からないが(妻は化粧をしないし、私も何の関心もない)白粉は化粧をする上で重要な位置を占めるようだ。肌を白く塗るという行為は紀元前からあったようで、人の化粧に対する思いがわかる。昔は白粉として使用される物質は植物のデンプンが主だったようであるが、要は肌を白く塗ることができれば良い訳で、白粉は塗った結果が白いほど価値がある。こうなると夫婦共々、理解できない価値観の世界に突入してしまうので、結局家に閉じこもり世間付き合いを避けるようになる。それはともかく、話を続けよう。

白粉はやがて鉱物性の水銀から生産されるようになる。水銀はかなり昔から知られており、それを含む鮮やかな赤い鉱物を辰砂(しんしゃ)と呼んだ。名前の由来は昔の中国の辰州という地域が特産地だったことからのようだ。辰砂は赤色の染料としても利用され、古墳などに描かれている絵の赤い部分に使用されている。また水銀は誰にでも分かる不思議な性質を持つ金属であることから、そこに神秘性や創造主の意思を感じたとしたも不思議ではない。人が勝手に感じているだけのような気がするが。その結果、辰砂を不老長寿の薬として中国や日本の有力者は使用していたらしい。つまり服用したのである。

水銀を飲むということが重篤な健康被害を引き起こすことは現代人は知っている。まあ詳しいことは知らんが無機水銀と有機水銀とでは、健康に及ぼす影響は大いに違うらしい。伊勢白粉という有名な商品があって、これは今の三重県多気郡あたりが辰砂(水銀)の産地であったことからだ。辰砂を日本では「丹(たん、に)」と呼び、これが地名につく場所は昔は辰砂が採れた場所である。地名につけるほどの価値があったのだ。

一世を風靡した伊勢白粉であるが、すでに江戸時代には採れなくなり、中国からの鉛から作られた白粉に取って代わられるようになる。鉛はそれまでの水銀白粉に比べてはるかに有毒で、その影響は明治時代になるまで続いた。特に高価な白粉をふんだんに使用できる場所にいる者が被害にあった。その当時のサービス業(想像してね)に従事していた女性とか、大奥に勤務していた女性とか、男性では歌舞伎役者である。鉛から作られる白粉が禁止されるのは明治になってからである。

今は白粉というよりファンデーションというのだろうか、不調法でよくは知らないが、原料は鉱物を粉砕したものだというのは聞いたことがある。どうしてそんなに必死に化粧するのか私にはまるで分からない。特に「美白」といって白塗りの顔を世間にさらすような人を見ていると、頭がどうかしていると思う。本当にキチガ…、おっと誰か来たようだ。これで失礼する。

写真:zassouneko「オシロイバナとヒガンバナ」知らない人の駐車場にて。
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