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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

キカラスウリには仲人さんが必要

キカラスウリ(黄烏瓜)/ウリ科カラスウリ属
つる性の多年草 在来種 花期は7〜9月

●昔のベビーパウダー(てんかふん=天瓜粉←ウリの字が入っている)は、この草から作った。

名前の由来は「カラスウリ(烏瓜)」が濃いオレンジの実をつけるのに対して「キカラスウリ」は黄色の実をつけることから。日本の在来種で、10世紀の書物には「加良須宇利」「加良須宇里」との記載がある。おそらく「黄色い実をつけるカラスウリ」と考えていたと思われる。

「カラスウリ」との区別に迷ったが「キカラスウリ」は葉に光沢があるというのが決め手になった。「カラスウリ」の葉は沈んだ緑色でザラザラした質感に見えるのだ。それにしても、なかなか個性的な花だ。この花は夕方から咲き始め、明るくなるとしぼんでしまうという。これでは生け花にはむいていないな。上の写真は昼過ぎ(「キカラスウリ」は夜更かしならぬ朝更しで「カラスウリ」に比べて花のしぼむのが遅いのだ。)の曇りの日にオートで撮影したものだが、花の細部の色調がとんでしまった。見にくくて申し訳ない。

この雑草は住宅とコンクリートの塀の間の30cmほどの隙間に咲いていた。「カラスウリ」と「キカラスウリ」は雌雄異株ということであるが、こんな街中ではそうそう異性との出会いがあるはずもない。長い独身生活になりそうだと心配になる。ところが本人たちは多年草(種ができなくても来年になれば残った根から発芽できる)なので、そんなに焦っている訳でもなさそうだ。両者とも花は夕方から咲き始めるというから「スズメガ(雀蛾)」のような夜に活動する昆虫の助けを借りて受粉をするようだ。夜に咲いている花自体が少ないのでそれだけ出会いの確率は高くなる。まあ出会うと云っても「受粉」という極めて直接的な意味ではあるが。
 受粉した結果、実(子供)ができるがそれに引っかけて強引に話を進める。「キカラスウリ」の根からはデンプンが採れるが、昔はそれをベビーパウダーとして利用していたそうである。少し前の言葉で言うと「天瓜(花)粉(てんかふん)」だ。1700年初め江戸時代の育児書に記録があるそうだ。まあ他にも「天花粉」として利用していた植物もあるようだが、ランクがあるらしく「カラスウリ」などは代用品という位置付けである。つまり「キカラスウリ」の方が粒子が細かくてサラサラしており吸水性に富んでいた訳である。またデンプンが採れるということは食べられるということであって、飢饉の際の救荒食物としての一面を持つ。

現代のベビーパウダーは滑石(タルク)の粉末とコーンスターチなどを混ぜたものであるようだ。この滑石は別名「ローセキ(石)」とも言う。「ロー」は蝋燭(ろうそく)の蝋のことで色も白くて似ていたからだろう。この石はモース硬度が「1」で最も柔らかい鉱物である。昔の子供(私にも経験がないので戦後すぐぐらいのことか?)は、今のチョークの代わりに滑石で地面に落書きをしていたそうだ。

ベビーパウダーをなぜ「天花粉」と呼ぶのかというと「天花」は雪のことを指すそうだ。天から降ってくる粉雪を「天の花=ベビーパウダー」と見立てたらしいが、天にある花は「蓮(ハス)」じゃなかったっけ。また「天瓜粉」と書く場合もあるが、こちらの「天瓜」とは古い中国の書物に「カラスウリ」を「天瓜」と表記してあったことかららしい。こちらの方が正しいような気がするが、「天花」に比べるとロマンが無いよね。

それにしてもさすが生活に密着した在来種だ。エピソードに事欠かない。私事だが自然との付き合いも、こうありたいと願わずにはいられない。


撮影:zassouneko 時期:9月の上旬
追加&訂正:2015.12.9文章を一部訂正・加筆
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