忍者ブログ

雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ニラ/お待たせしました、横綱級の登場です。

ニラ(韮)/ヒガンバナ科/ネギ属
多年草 花期8〜9月 別名:フタモジ、ミラ、コミラ

さて「ニラ」である。これを雑草として取り上げるのにはためらいがある。なぜなら野菜としての地位が確立しているし、街中に生えているものは誰かが種を蒔いた可能性が高い。だが2年連続して同じ場所から生えているのを見つけて、これからも自生していくだろうと判断した。身近な雑草の誕生である。同じような経過をたどった植物に「シソ(紫蘇)」がある。つまり「野生種」→「栽培種」→「逸出して野生化」の経過を辿っていることになる。まあ元に戻ったといえばいいか。

日本では、韮(漢名)に対して深江輔仁「本草和名(918)」、また源順「倭名類聚抄(934)」に和名「古美良」とある。また江戸時代の小野蘭山「本草綱目啓蒙22(1806)には「コミラ」「コニラ」「ニラ」「フタモジ(上総)」とある。結局のところ、名前の由来はわからない。「ミラ」とか「ニラ」と呼ばれていたのは確かなのだが、何故その呼ばれるようになったのかは分からないのである。

別名に「フタモジソウ(二文字草)」とあるのは「ニラ」と書くと2文字だからで、平安時代頃の「女房言葉」である。「ヒトモジ(一文字)」は「ネギ」のことで、「ネギ」を昔は「キ」と呼んでいたからだ(アオカモジグサ/2015.5.19参照)。

「古事記」や「日本書紀」にも「ニラ」についての記載があるというから、いわゆる史前帰化植物(古くから栽培されていた)か、遣唐使などによってもたらされた可能性もある。もともと東アジア原産の栽培種が日本にやってきたという。現在では中国やフィリピン、インドネシア、パキスタン、インドで栽培されているという。また野生種が東アジアやヒマラヤ、中央アジア、シベリアに分布して自生しているようだ。
日本での栽培は9〜10世紀ごろからというが、盛んになったのは意外にも第二次大戦後のことらしい。同じネギ属の「ニンニク」が持つ独特の香り(アリイン)があり、強壮・強精・下痢止めの効果があるとされている。よく禅寺の門前に「葷酒山門に入(い)るを許さず」の文字を刻んだ石碑(戒壇石と言うらしい)があるが、その葷(五葷)の中に「ニラ」も入っている。もっとも宗派や時代によって「五葷」の内容が違うらしいという話もあるが。「ニラ」は漢方薬としても利用されているし、料理方法も多彩で、餃子はもちろん、おひたし、野菜炒めや味噌汁の具、味噌和えなどが筆頭である。

道端の雑草に栽培種ほどの風味や味覚や食感を期待してはいけないが、それでも期待はずれにはならないだろう。繁殖力も旺盛で、葉を刈り取っても、すぐに再生するので年に3回ほど収穫できるという。素晴らしい雑草である。ただ「スイセン」を「ニラ」と誤って食べてしまい中毒をおこして病院に運ばれる事例が後を絶たない。別項でその辺りを探ってみたい。

写真:zassouneko
訂正&追記:(2015.11.17)写真を間違えていました。申し訳ございません。
PR