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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ヒメイヌビエ/人の命を繋(つな)いできたのに

ヒメイヌビエ(姫犬稗)/イネ科/イヌビエ属
在来種 1年草 花期は8〜10月

稲の渡来とともにやって来たと思われる史前帰化植物である。ヒメイヌビエ(姫犬稗)は田に生える稗に似た植物であるが役に立たず(=犬)、でも見た目は小さくて可愛らしい(=姫)稗という意味である。「役に立たない」とは収量が少ないということだ。

ここで覚えておいていただきたいのは名前の逆転現象が起こっているということだ。人が利用し役に立っている稗というのは、もともと犬稗だったからである。人為的にか偶然にか不明だが(おそらく両者相まって)、数多くの実をつける種が登場したのである。人はそれを本来の「ヒエ(稗)」と呼ぶようになり、人に役立つような進化を遂げなかった種をイヌビエ(犬稗)とした。イヌビエはそれを何とも思っていないだろうけどね。
一般にヒエ(稗)と言っても、もう現代人には縁が薄い存在になっている。その姿や味を知る者は少ないだろう。私も知らない。ところがヒエは昭和の初期までは日本の主食の一つであったが、やがて米の増産に成功したため廃れていったという。米を主食と呼べるようになったのは最近である。主食となってから90年も経っていない(「エノコログサ」2015.5.19参照)。縄文時代の大規模な遺跡である青森県の三内丸山遺跡からは大量のイヌビエが発見されており、主要な穀物であったことがわかる。また青森には宮中の新嘗祭に使われる稗を栽培する制度がある。これは日本人と稗との深い関わりを示している。現在では健康食品や食物アレルギーの患者の主食としての利用が注目をあびているようである。

同じ仲間として「イヌビエ」「ケイヌビエ」「タイヌビエ」「ヒメイヌビエ」「ヒメタイヌビエ」を探すことができたが、名前のつけ方が混乱しているようだ。「イヌビエ」と「ケイヌビエ」は同じだとしている資料もある。どうやら分類方法は麦や稲のようなヒゲ(芒=のぎ)があるか無いかということと、生えている場所が田んぼか野原かということによって分かれているらしい。この草は住宅地の空き地で見つけたのとヒゲが無いので「ヒメイヌビエ」とした。正しいかどうかはわからない。
写真&イラスト:zassouneko
イラストを追加しました。(2016.1.8)
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