忍者ブログ

雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ヤブラン/人の欲望の向かう先

ヤブラン(藪蘭)/ユリ(キジカクシ)科/ヤブラン属
在来種 多年草 花期:8〜10月

名前の由来は「藪」に咲く「蘭」であるが「ヤブラン」はラン科ではない。日本の在来種としての「蘭」は「シュンラン(春蘭/春に咲く)」と「カンラン(寒蘭/冬に咲く)」が有名で、「東洋ラン」としてどちらもマニアには熱狂的な支持を得ている。「ヤブラン」の花はそれらの「蘭」とはまるで似ていないが葉の様子が似ているので、「ヤブラン」と名付けたらしい。「クンシラン(君子蘭/ヒガンバナ科/明治時代に渡来)」もそうだ。

上の写真の右奥に見える葉の周囲が白っぽくなったものは「ヤブラン」の園芸種になる「フイリ(斑入り)ヤブラン」の葉である。私が物心つく頃(半世紀ほど前になるが)の日本家屋の庭には盛んに植えられていた。当時の流行りの花だったのかもしれない。ありふれた草だった気がする。

これは個人的な感想であるが、昔からこの草には何か違和感のようなものを感じていた。くすんだ葉の深緑色は陰気な印象を与え、それに反するような明るい紫色の花は陽気というより軽薄な感じがする。葉が「斑入り(ふ=まだら/色がまだら色に変化する)」のものを園芸種として作り出したのも、あの深緑の葉に不満があったからだろう。

今回、たくさんの「ヤブラン」の写真を改めて見たのだが、私の持つ違和感の正体が掴めた気がする。それは植える場所を間違っているということだ。丈夫だからといって陽の当たる明るい場所に数多くを植えるものではないのだ。それは薄暗く湿った山中にひっそりと咲いている「ヤブラン」の写真を見つけた時に確信に変わった。「やはり野におけ蓮華草」という言葉が頭に浮かんだ。
ところで私の住んでいる名古屋の中心部に近いあたりでは「ヤブラン」を、行政も含めて保護の対象にしているようだ。参考に下の写真を見ていただきたい。植え込みの雑草を刈り取る作業でも「ヤブラン」は切られることが少ない。そのためか、あちこちで「ヤブラン」が飽和状態になっている。はっきり言って不自然であるし、かえって無機質な感じがする。


最初に記載した在来種の2つの蘭(カンラン、シュンラン)は、常軌を逸した乱獲(※)と環境の変化もあって、野生種は壊滅状態に近いという。「カンラン」は確実に絶滅に向かっている。隠された宝を求めて人が山に入るからである。
(※)「カンラン」は昭和30〜40年代にはすでに貴重で高い値がついていたようだ。その当時、高知県のある地域では地元の小学生を総動員して、山の裾野から山頂まで土まで掘り起こして「カンラン」を探したそうである。そのため山の形が変わってしまったという。

追記&訂正:2015.12.13/写真を追加しました。
写真:zassouneko
PR