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雑草探偵団

おっさんの雑草観察記です。花がどうとか生態がどうしたとかの科学的な興味はあまりありません。興味があるのは歴史や名前です。人との関わりや何でその名前になったのかに興味があります。その辺りを想像や仮定を交えながら書いています。個人の勝手な妄想のようなものですから、あまり信用してはいけません。また、このサイトはライブドアブログとミラーサイトになっています。何かあった時のバックアップです。

ギシギシ/何でこんな名前になった?

ナガバギシギシ(長葉羊蹄)/タデ科/ギシギシ属
ヨーロッパ原産 多年草 50〜150cm 花期6〜8月

在来種の「ギシギシ」との区別が私には出来ないので、こうした場合は外来種を選択することに決めている。生えている場所といえば都市部の住宅街にある小さな空き地である。そこに在来種がいきなり生えてくるとは考えづらいからである。
何だか花の部分がごちゃごちゃしている。この花の様子を内花被片というらしい。この形が羊の蹄に似ているということから中国名は「羊蹄」になったという。羊は偶蹄類なので爪先は2つに分かれている。まあハートの形に似ているといったところか。ずっと緑色をしているので花が咲いているのかわからないが、実は緑色の花びらなのである。紛らわしい。

それにしても「ギシギシ」とは、おかしな名前である。この名をめぐってはいくつかの説があるのでいくつか紹介してみよう。深江輔仁「本草和名(918年)」では羊蹄(漢名)に対して「和名之乃祢(しのね)」、源順「倭名類聚抄(934年)」では「和名之布久佐(しぶくさ)、一云之(し)」とある。最初に「しのね」とある「ね」は「根」であって、この植物の根っこは薬として使用されていたからである。現在でも「羊蹄根」は漢方薬として使われている。「羊」はどうやっても「し」とは読まないので、どうやら「し」というのが元々の日本の呼び名であるようだ。江戸時代の小野蘭山『「本草綱目啓蒙(1806)」でも「し」「しのね」が最初に出てくるが地方の呼び名に「ギシギシ」(京都)と出てくる。この一地方での呼び名が全国に広まったと考えても良いだろう。「し」はよいが「ぎ」はどこから来た。
この花穂(かすい)を握って、花の部分をしごき落とそうとすると「ギシギシ」と音がするとか、振ると「ギシギシ」と聞こえるからという説がある。江戸時代に「ぎしぎし」というオノマトペがあったのかは不明なんだが。また擬宝珠(ぎぼし/ぎぼうし)からきたという話もある。擬宝珠とは橋の欄干の両端の柱にのせる装飾だ。武道館の上にのっている玉ねぎをひっくり返した形である。その形が「ギシギシ」の花に似ているからというものだ。「ぎぼし」が「ぎし」になったというが「ぎしぎし」と2回繰り返すのは何故なんだ。

結局、名前の由来ははっきりしないが別に問題はない。我々は「ギシギシ」と呼ぶしかないのであるから。あーそうそう、武道館の上にあるのは玉ねぎではなく「ネギの花」である。「ネギの花」は「葱坊主(ねぎぼうず)」というが「擬宝珠(ぎぼうし)」と発音が似ているなあ。関係ないけど。

※「擬宝珠」説はHP「別府街角ウォッチング/草木名の話/和泉晃一」を参考にさせていただきました。ありがとうございます。(敬称略)

写真:zassouneko
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